小中高生の自殺、2025年は過去最多538人 背景は「学校」だけではない

小中高生の自殺、2025年は過去最多538人 背景は「学校」だけではない

何が起きた?

2025年に自殺で亡くなった小中高生は538人となり、統計のある1980年以降で過去最多となりました。

2024年の529人から9人増え、小学生10人、中学生172人、高校生356人でした。

2026年8月現在、これが確定している最新の年間記録です。2026年分はまだ年の途中なので、「2026年が過去最多」という意味ではありません。

特徴的なのは、日本全体では自殺者数が減っている一方、子どもでは高い水準が続いていることです。

2025年の国内の自殺者数は1万9188人で、前年から1132人減りました。それでも小中高生は過去最多を更新しました。

小中高生の自殺者数は2020年に大きく増えて約500人となり、その後も高い水準が続いています。

一時的な増加ではなく、数年間にわたって改善が見られないことが大きな問題です。

簡単にいうと

「いじめが増えたから」「受験が大変だから」と、一つの原因だけで説明できる状況ではありません。

たとえるなら、子どもが背負っているリュックの中に、学校、家庭、人間関係、心の不調、将来への不安などの荷物が少しずつ入っていくようなものです。

一つ一つなら耐えられても、いくつも重なり、相談できない状態まで加わると、負担が非常に大きくなることがあります。

警察が2025年の小中高生について確認した原因・動機では、「学校問題」が251件、「健康問題」が174件、「家庭問題」が147件でした。

学校問題のうち、学業不振58件、入試に関する悩み28件、入試以外の進路に関する悩み55件を合わせると141件で、学校問題全体の半数を超えます。

ただし、これは「251人が学校を理由に自殺した」という意味ではありません。

原因・動機は、1人につき最大4項目まで計上できます。家庭と学校、心の不調など、複数の問題が同時に確認されることもあります。

また、原因・動機の「不詳」は88件でした。

警察庁も、自殺の多くには多様で複合的な原因や背景があり、さまざまな要因が連鎖する中で起きることに注意が必要だとしています。

それで何が変わる?

これまで以上に重要になっているのが、本人から「助けて」と言ってくるのを待つだけではない対策です。

2026年4月、こども家庭庁は「『こどもの命と安全を徹底的に守る』大臣プロジェクト2026」の第1弾として、「こども・若者 自殺防止総力戦略」を公表しました。

危険性が高い子どもや若者を、危機が深刻になる前に把握し、学校だけでなく自治体や医療、福祉などの支援へ確実につなげることが大きな柱になっています。

学校でも、1人1台の端末などを使って心や体調の変化を把握する「心の健康観察」が進められています。

文部科学省は、端末によるチェックだけで終わらせず、教員、管理職、養護教諭などで情報を共有し、必要ならスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、医療機関などへつなぐ体制を求めています。

さらに政府は2026年8月、夏休み明け前後に合わせ、こども・若者の自殺防止に向けた集中的な啓発活動を始めました。

過去の統計で、長期休暇が終わる時期に自殺が増える傾向が確認されているためです。

なぜ過去最多になった?

ここは慎重に見る必要があります。

「2025年に過去最多になった原因はこれ」と特定できる段階ではありません。

むしろ最新のデータから分かるのは、単純な説明では足りないということです。

たとえば2025年は、「学校問題」として確認された件数が前年の272件から251件へ減っています。

一方、「家庭問題」は108件から147件、「健康問題」は164件から174件へ増えました。それでも小中高生全体の自殺者数は529人から538人へ増えています。

つまり、

「学校の問題が増えたから自殺者が過去最多になった」

とは言えません。

2026年4月には、こども家庭庁の事業として行われた「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究」の結果も公表されました。

インターネット相談やオンライン掲示板などに寄せられた子どもの声を分析すると、危機の初期には家庭、学校、本人自身に関する悩みが現れ、そこから精神的不調や自分を否定する気持ちが強まり、強い心理的苦痛へ進んでいく流れが示唆されました。

つまり、ある日突然一つの出来事だけで危機に陥るというより、複数の問題が時間をかけて重なるケースがあるということです。

ただし、この調査も全国のすべての子どもや、2025年に亡くなった538人全員を調べたものではありません。

「家庭問題が増加の原因だった」などと断定することはできません。

夏休み明けに増えるのはなぜ?

もう一つ確認されている特徴が、時期による偏りです。

文部科学省は、長期休業の終了前後に児童生徒の自殺が増える傾向があることから、夏休み前から休み明けまで継続して子どもの状態を確認するよう学校に求めています。

2025年の月別人数を見ると、9月は62人で1年間でもっとも多くなりました。

ただし、「夏休み明けだから自殺した」と単純に考えることもできません。

登校、人間関係、成績、進路など、それまで一時的に距離を置けていた問題と再び向き合う時期になることは考えられますが、個々の背景は異なります。

だからこそ政府も、休み明け当日だけに声をかけるのではなく、長期休業に入る前から、休暇中、休み明けまで継続して子どもの変化を確認するよう求めています。

最新の統計や調査から見えてくるのは、子どもの自殺を「いじめ」「受験」「家庭」といった一つの言葉だけで説明する危うさです。

学校や家庭での問題、心の不調、孤立などが重なり、本人が危険な状態になっても周囲から見えない場合がある。

過去最多という数字を減らすには、問題が表面化してから対応するだけでなく、子どもがまだ「助けて」と言えない段階でも変化に気づき、学校の外も含めた支援につなげる仕組みが重要になっています。

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