AIブームでメモリ不足は2030年まで? SK hynixが供給不足の長期化を予測

AIブームでメモリ不足は2030年まで? SK hynixが供給不足の長期化を予測

何が起きた?

韓国の半導体大手SK hynixは2026年8月27日、米インディアナ州でAI向けメモリの新拠点の起工式を行いました。

この施設では、AI向け半導体に使われる次世代HBMの高度なパッケージングを行い、2029年後半から量産を始める予定です。投資額は40億ドルを超えます。

この起工式で同社のクァク・ノジョンCEOは、現在のメモリ供給不足について、2030年まで続くとの見通しを改めて示しました。

ただし、「2030年まで不足する」という考えが今回初めて明らかになったわけではありません。

クァクCEOは7月にも、2027年は業界史上でも特に厳しい供給不足になる可能性があり、2030年を超えても顧客の需要が自社の供給能力を上回るとの予測を示していました。

今回の起工式は、その長期的な供給不足を見越してSK hynixが実際に生産能力を増やし始めていることを示す動きです。

簡単にいうと

AIを動かすためには、計算するGPUなどの半導体だけでなく、そこへ大量のデータを高速で渡すメモリも必要です。

特に重要なのがHBM(広帯域メモリ)です。

たとえるなら、GPUがものすごく仕事の速い人でも、必要な書類を1枚ずつ渡していたら能力を十分に発揮できません。

そこで机のすぐ横に、必要な資料を一気に渡せる高速な書類棚を置く。

それがHBMの役割に近いものです。

生成AIやAIデータセンターが急増したことで、この「高速な書類棚」が世界中で大量に必要になっています。

その結果、メモリメーカーはHBMやサーバー向け製品を大量に作る必要に迫られています。

それで何が変わる?

影響はAI企業だけに限りません。

ここで重要なのは、HBMがそのままPCやスマートフォンに入るわけではないということです。

問題は、同じメモリメーカーが限られた工場や生産能力を使って、HBM、サーバー用DRAM、PC用DRAM、スマートフォン用メモリなどを作っていることです。

利益が大きく需要も強いAI・サーバー向けを優先すれば、一般向け製品に回せる生産能力が圧迫されることがあります。

TrendForceは2026年第3四半期について、一般的なDRAMの契約価格が前四半期比13~18%、NANDフラッシュが10~15%上昇すると予測しています。

同社によると、大手メモリメーカーがサーバー向けを優先していることで、PC向けDRAMの供給も圧迫されています。

ノートPCでは部品コストの上昇が販売価格へ反映され始めており、スマートフォンメーカーについても、メモリ価格上昇を補うため端末価格を引き上げる可能性があるとしています。

つまり、

「AI向けHBMが足りない」

だけではなく、

「AI向けに生産能力が集まることで、PCやスマホ向けメモリにも影響が広がる」

ことが問題なのです。

ただし、SK hynixの予測は、すべての種類のメモリが2030年まで値上がりし続けるという意味ではありません。

HBM、PC用DRAM、スマートフォン用DRAM、NANDでは、それぞれ需給や価格の動きが違います。

なぜ簡単に増産できない?

「足りないなら工場を増やせばいい」と思うかもしれません。

しかし半導体工場は、今日建設を決めて来年大量生産できるような設備ではありません。

SK hynixは2026年8月、韓国の龍仁と清州に新しいDRAM・NAND工場を建設するため、約54兆ウォンを投資すると発表しました。

それでも、清州の新工場で最初のクリーンルームが使えるようになる予定は2028年12月、龍仁の新工場は2029年6月です。

米インディアナ州の新拠点も40億ドル以上を投じますが、次世代HBMの量産開始は2029年後半の予定です。

つまり、

「需要が足りないと分かる」

「工場建設を決める」

「実際に大量生産できる」

までに数年かかります。

一方、AIデータセンターへの投資はすでに世界各地で急速に進んでいます。

そのため供給側が追いつきにくくなっています。

本当に2030年まで不足する?

まだ確定した未来ではありません。

「2030年まで供給不足が続く」というのは、SK hynix経営陣による将来予測です。

AI投資が現在の勢いで続くことや、新工場の建設が予定通り進むことなど、さまざまな前提によって結果は変わります。

一方、短期的な供給不足を予測しているのはSK hynixだけではありません。

Reutersによると、UBSも世界のDRAM市場について、少なくとも2028年第2四半期まで供給不足が続くと予測しています。

SK hynix自身も、需要に追いつくため大規模な増産を進めています。

同社が引用しているOmdiaの予測では、DRAMとNANDの需要は2025年から2030年にかけて、年平均19%で増える見通しです。

今後の焦点は、

AI向けメモリ需要がどこまで増えるのか

そして、

SK hynix、Samsung、Micronなどの増産がどこまで追いつくのか

です。

AIブームが続けば、GPUだけではなく、その周囲にあるメモリを誰がどれだけ確保できるかが、AI産業だけでなくPCやスマートフォンの価格にも関わる問題になりそうです。

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