GoogleもAppleも捨てなくていい 巨大IT企業に依存しすぎないための7つの方法

GoogleもAppleも捨てなくていい 巨大IT企業に依存しすぎないための7つの方法

何が起きた?

検索、メール、写真、地図、スマートフォン、クラウド。私たちの生活はGoogle、Apple、Microsoft、Amazonなどの巨大IT企業が提供するサービスに深く入り込んでいます。

前の記事で見たように、この集中には弱点もあります。政府による制裁や法律の変更が、巨大IT企業を通じてメールやアプリ、端末などへ一気に波及することがあるからです。

こうした「乗り換えにくさ」は、個人だけの心配ではありません。

EUの欧州委員会は2026年4月、巨大IT企業を規制する「デジタル市場法(DMA)」の初めての見直し結果を発表しました。データを別サービスへ移す機能や、ブラウザ・検索エンジンを選べる仕組みなどが改善した一方、巨大サービスとの連携にはまだ技術的な障害が残っているとしています。

さらにAppleとGoogleは、DMAへの対応の一環として、iPhoneとAndroidの間でより完全にデータを移せる仕組みの開発を進めています。

つまり世界では今、「巨大IT企業を使わせない」のではなく、「いつでも別のサービスへ移れるようにする」ことが重要になっているのです。

では私たち個人には何ができるのでしょうか。

簡単にいうと

巨大IT企業を使うこと自体が問題なのではありません。

危険なのは、その会社が使えなくなったら、自分まで何もできなくなる状態です。

たとえば引っ越しを考えてみます。

住んでいる家が気に入っているなら、そのまま住んでいて構いません。しかし「退去すると家具も写真も銀行口座も電話番号も全部置いていかなければならない」という家だったら、実質的には引っ越せません。

デジタルサービスでも同じです。

Gmailを使いながらメールを書き出せる。Googleフォトを使いながら写真の別コピーも持つ。Googleアカウントでログインしているサービスにも別の復旧手段を用意する。

大切なのは、

「使わない」ことではなく「逃げられる」ことです。

それで何が変わる?

まず、自分が何を1社に預けているか確認してみましょう。

たとえばGoogleの場合、人によってはGmail、Googleフォト、Googleドライブ、カレンダー、連絡先、YouTube、Androidのバックアップ、パスワード、さらに「Googleでログイン」まで同じアカウントにつながっています。

便利ですが、一つのアカウントが非常に大きな「鍵」になります。

Google自身も、Googleアカウントを削除すると「Googleでログイン」が利用できなくなり、関連するサードパーティーとの接続も削除されると説明しています。サービスによっては別のログイン方法を設定できる場合があります。

Appleでも同じように、Apple Accountを中心にiCloud写真、ファイル、端末の機能など多くのサービスがつながっています。

だからといって全部別会社にする必要はありません。

むしろ、

「失ったら特に困るもの」から逃げ道を作る

だけでも、依存度はかなり下げられます。

具体的には次の7つです。

1. 写真や重要書類をクラウドだけに置かない

スマートフォンの写真がGoogleフォトやiCloudだけにあるなら、PCや外付けSSDなどにもコピーしておきます。

バックアップの考え方としてよく使われるのが「3-2-1」です。

重要なデータを3つ持ち、2種類の保存方法を使い、そのうち1つを別の場所に置くという方法です。英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)もこの方法を紹介しています。

一般家庭なら厳密に実行しなくても、

「クラウドに1個+自宅のPCや外付けストレージに1個」

だけでも、クラウドにしか存在しない状態よりはかなり安全です。

2. 定期的にデータを書き出す

Googleには「Googleデータエクスポート(Google Takeout)」があります。

Gmail、Googleドライブ、カレンダー、Googleフォト、YouTubeなどのデータをまとめてダウンロードできます。

Appleにも「データとプライバシー」という仕組みがあり、Appleが保存している自分のデータのコピーを取得できます。日本の利用者も対象です。

写真やApple Musicのプレイリストなど、一部のデータは別サービスへ転送することもできます。

毎週やる必要はありません。

大切な写真や文書が多い人なら、数カ月に1回程度、「ちゃんと自分の手元へ取り戻せるか」を確認するだけでも意味があります。

3. 「Googleでログイン」だけを唯一の入口にしない

「Googleでログイン」「Appleでサインイン」は非常に便利です。

ただし、重要なサービスまで一つのアカウントだけに結び付けると、そのアカウントを失ったときの影響が広がります。

銀行や仕事、重要な有料サービスなどでは、サービス側が対応しているなら、別のメールアドレス、パスワード、復旧方法なども登録しておく方が安心です。

特に確認しておきたいのは、

「GoogleやAppleのアカウントに入れなくなった場合、このサービスへどうやってログインするのか」

です。

一度確認しておけば十分です。

4. パスワードまでスマホメーカーだけに依存しない

iPhoneやAndroidには便利なパスワード管理機能があります。

これを使うこと自体に問題はありません。

ただ、将来iPhoneからAndroid、あるいはその逆へ移りたいと考えるなら、「パスワードを書き出せるか」「WindowsやMacでも使えるか」といった点も確認しておくと乗り換えやすくなります。

第三者のパスワード管理サービスを選ぶ場合も、複数のOSやブラウザで利用できるか、データをエクスポートできるかを見ることが重要です。

5. ファイルは普通の形式でも保存する

重要な文書や写真を、特定のアプリでしか開けない状態にしないことも大切です。

たとえば完成した文書ならPDF、写真ならJPEGやPNGなど、さまざまなソフトで開ける形式のコピーを残しておきます。

サービスそのものを移せなくても、中身だけは持って逃げられるからです。

6. メールアドレスをすべての身分証にしすぎない

現在のネットサービスでは、メールアドレスが事実上の身分証になっています。

そのため、一つのメールサービスが使えなくなると、ほかのサービスのパスワード再設定まで難しくなることがあります。

重要なアカウントでは、可能なら別の復旧用メールアドレスや電話番号も設定しておきます。

さらに上級者向けには、自分で取得した独自ドメインのメールアドレスを使う方法もあります。

メール会社を変更しても、同じドメインを自分で管理していればアドレスを維持しやすいという利点があります。ただしドメインの更新や設定を自分で管理する必要があるため、誰にでも必要な方法ではありません。

7. 新しいサービスを選ぶとき「辞められるか」を見る

これが最も重要です。

これまではサービスを選ぶとき、

「無料か」
「便利か」
「容量はいくつか」

を見ることが多かったと思います。

そこにもう一つ、

「辞めるとき、データを持っていけるか」

を加えます。

写真を書き出せるか。

メールを移せるか。

パスワードを書き出せるか。

ほかのスマートフォンでも使えるか。

別の会社へ乗り換えられるか。

「退会のしやすさ」は、サービスの性能の一部だと考えてよいでしょう。

全部を別会社にする必要はない

ここで注意したいのは、「Googleは危険だから全部やめよう」という話ではないことです。

Google、Apple、Microsoftなどのサービスは便利であり、高いセキュリティを提供しているものも少なくありません。

無理に10社へ分散すると、今度は10個のアカウントやパスワードを管理しなければならず、かえってトラブルが増えることもあります。

目指すべきなのは完全な分散ではなく、重要なものに予備の出口を一つ作ることです。

たとえば、

Googleフォト+外付けSSD。

Gmail+データの書き出し。

Googleログイン+別の復旧手段。

これだけでも違います。

巨大IT企業への依存を減らすというと、難しいLinuxを使ったり、自宅にサーバーを置いたりする話を想像するかもしれません。

普通の人にはそこまで必要ありません。

「いつでも乗り換えられる社会」が重要

個人の工夫だけでは限界もあります。

スマートフォンのOSやアプリストア、検索エンジンなどは、個人ではどうにもできないほど巨大な仕組みだからです。

そこでEUのDMAでは、一定規模以上の巨大プラットフォームに対して、利用者が自分のデータを持ち出せる仕組みや、他社サービスとの相互運用などを求めています。

欧州委員会は2026年5月、AppleとGoogleがiPhoneとAndroid間で、より完全な端末データを移行できる仕組みを開発していると発表しました。

これは単なる便利機能ではありません。

「Androidを使い始めたからGoogleから離れられない」「iPhoneを使っているからAppleから離れられない」という状態を弱める効果があります。

巨大企業が存在すること自体をなくすのは現実的ではありません。

そして、巨大IT企業をすべて生活から追い出す必要もありません。

必要なのは、

個人は「逃げ道」を持つ。

社会は、その逃げ道を企業に塞がせない。

ということです。

目指すべきなのは、「Googleを使わない生活」ではありません。

明日GoogleやAppleが使えなくなっても、大切な写真やメールやアカウントまで一緒に失わない生活です。

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