結婚は本当にした方が得? お金・子ども・病気・介護・死別・老後まで考える

結婚は本当にした方が得? お金・子ども・病気・介護・死別・老後まで考える

何が起きた?

2026年9月11日に公表された国立社会保障・人口問題研究所の最新調査で、18~34歳の未婚者のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた割合は、男性75.1%、女性77.8%となり、初めて男女とも8割を下回った。

「結婚には利点がある」と考える人も減少している。一方で、「独身生活には利点がある」と考える人は依然として多い。

では、実際のところ結婚は得なのだろうか。

この問題は、税金や家賃だけを比べても答えは出ない。結婚すれば、愛情や安心感、生活費の共有といった利益が期待できる一方、不倫、離婚、病気、障害、失業、介護、死別など、相手の人生で起きる出来事も自分の生活に直接影響するようになる。

さらに、子どもを持つか、どんな相手と結婚するか、自分と相手の健康状態や収入、老後にどれだけ人間関係を維持できるかによっても結果は大きく変わる。

結婚の本当のメリットとデメリットは、人生全体で考える必要がある。

簡単にいうと

結婚は、たとえるなら「二人で人生の利益とリスクを共有する仕組み」に近い。

一人で生きていれば、自分が失業したり病気になったりしたとき、その影響は基本的に自分で引き受ける。一方、恋人や知人が失業しても、自分がその生活を支えなければならないとは限らない。

結婚すると、この関係が変わる。

自分が病気になれば配偶者に支えてもらえるかもしれない。しかし、配偶者が病気になれば、今度は自分が支える側になるかもしれない。

二人とも健康で働き続ければ、収入を持ち寄り、家賃や光熱費を共有し、家事も分担できる。かなり効率のよい生活になる可能性がある。

ところが一方が長期間働けなくなれば、もう一方の収入で二人を支えることになる可能性もある。

つまり結婚は、

「幸福を必ず増やす制度」

でも、

「自由を奪うだけの制度」

でもない。

人生の上振れだけでなく、下振れも二人で共有する制度だと考えると分かりやすい。

それで何が変わる?

まず、法律婚には明確な制度上のメリットがある。

大きいのが相続だ。法律上の配偶者は常に相続人になるが、内縁関係の相手は自動的には法定相続人にならない。

相続税でも配偶者への優遇が大きく、配偶者が取得する遺産については、原則として「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額まで相続税がかからない仕組みがある。

所得税にも配偶者控除や配偶者特別控除がある。ただし所得条件があるため、誰でも結婚すれば大きく税金が安くなるわけではない。双方が一定以上働いている共働き夫婦では、恩恵が小さい場合もある。

死亡した場合にも一定の保護がある。条件を満たす子のいる配偶者には遺族基礎年金があり、厚生年金加入者では遺族厚生年金の対象になる場合もある。

つまり法律婚の強みは、単に一緒に暮らせることではない。

病気、死亡、離婚など「何か起きたとき」に法律による保護が用意されていることが大きい。

反対に、結婚すると簡単には関係を切れなくなる。

離婚では財産分与、年金分割、子どもがいれば養育費や親子交流などを整理する必要がある。2026年4月以降の離婚では、財産分与を家庭裁判所に求められる期間も原則5年となっている。

恋人同士なら別れて終わる問題が、結婚すると財産や生活を整理する法的な問題になる。

これは保護でもあり、同時に制約でもある。

「子ども」と「良い配偶者」を前提にすると判断を誤る

結婚の損得を考えるとき、特に注意したいのが「理想的な家庭」を基準にしないことだ。

よくある比較は、

「優しく健康で収入が安定した配偶者と暮らす生活」

と、

「孤独な独身生活」

である。

これでは当然、結婚が有利になる。

しかし現実には、良い結婚だけでなく悪い結婚も存在する。

配偶者の不倫、浪費、借金、失業、依存症、犯罪、DVなどによって、それまで無関係だった問題が自分の人生にも入り込む可能性がある。

内閣府の調査では、結婚したことがある人の25.1%が、身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫などを含む配偶者からの何らかの暴力を経験したと回答している。

一方で、自分自身が病気になったり、失業したり、精神的に不安定になったりする可能性もある。そのとき支えてくれる配偶者がいることは、大きなメリットになる。

家事についても同じだ。

「結婚すれば家事が半分になる」とは限らない。

総務省の2021年社会生活基本調査では、6歳未満の子どもがいる夫婦の家事関連時間は、夫が1日平均1時間54分、妻が7時間28分だった。

分担できる相手なら結婚は負担を軽くするが、分担が偏れば、逆に自分以外の家事や世話まで増えることになる。

そして最も分けて考える必要があるのが子どもだ。

教育費や育児負担、子どもの病気や障害、不登校などは、「結婚したこと」によって直接発生するリスクではなく、主として「子どもを持ったこと」に伴う問題である。

逆に、子どもや家族を持てることを大きな幸福と感じる人もいる。

そのため本来は、

独身・子どもなし
事実婚・子どもなし
法律婚・子どもなし
法律婚・子どもあり

などを分けて比較しなければならない。

「結婚」と「出産」を同じものとして計算すると、結婚そのものの損得が見えなくなる。

仕事にも影響する。

転勤、転職、海外赴任などを自分一人の都合だけでは決めにくくなる一方、失業したときには配偶者の収入が生活を支えてくれる可能性がある。

さらに年齢を重ねれば、自分の親だけでなく配偶者の親の病気や介護が生活に影響することもある。

結婚とは、二人だけを結びつける制度でありながら、現実の生活では家族・仕事・資産まで広い範囲を結びつけることになる。

老後は「一人にならない」ではなく「支え合える期間がある」

老後は、結婚のメリットが最も分かりやすく見える部分でもある。

二人とも元気なら、話し相手がいて、一緒に食事ができ、病気や転倒などの異変にも気付いてもらいやすい。

生活費も二人で共有できる。

しかし、配偶者も同じように年を取る。

2025年の平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳。65歳になった人の平均余命は男性19.68年、女性24.52年ある。

老後はかなり長い。

しかも、最後まで二人とも健康とは限らない。

最新の健康寿命は2022年値で、男性72.57歳、女性75.45歳。平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年だった。

この数字は、その期間すべてを寝たきりや要介護状態で過ごすという意味ではない。健康上の問題によって日常生活に何らかの制限がある期間の平均である。

それでも、「老後まで二人ともずっと健康」という前提だけで結婚を評価するのは現実的ではない。

厚生労働省の2022年国民生活基礎調査では、在宅の要介護者から見た主な介護者として「配偶者」が22.9%を占めている。

つまり配偶者は、

自分が介護される側になれば大きな助けになる一方、相手が介護される側になれば自分が介護者になる可能性もある。

さらに、配偶者が認知症になれば、お金の管理や施設契約なども問題になる。婚姻しているだけで配偶者がすべてを自由に代理できるわけではなく、状況によっては成年後見制度などが必要になる。

そして見落とせないのが死別である。

「結婚すれば老後は一人ではない」とは限らない。

たとえば30歳で結婚し、80歳で配偶者を亡くし、自分が95歳まで生きれば、50年間夫婦で暮らしたあと、最後の15年間は一人で暮らすことになる。

長く夫婦だけを中心に生活してきた人ほど、死別によって配偶者だけでなく日常の人間関係まで一気に失う可能性もある。

その意味では、老後の安全を決めるのは「結婚しているか」だけではない。

配偶者、子ども、友人、兄弟姉妹、地域とのつながり、資産、年金、介護サービスなど、複数の支えを持っている方が強い。

結婚していても配偶者一人だけに老後を依存するのは危険であり、独身でも十分な資産と人間関係、外部サービスを確保していれば孤立を避けられる可能性がある。

結局、「結婚した方が得か」という問いには、一つの答えはない。

比べるべきなのは、

幸せな結婚と寂しい独身

ではない。

良い結婚、悪い結婚、充実した独身、孤立した独身

である。

良い配偶者に恵まれ、互いに健康で、家事やお金を公平に分担できれば、結婚は生活の幸福と安定を大きく高める可能性がある。

反対に、不仲、暴力、依存症、重い経済問題などを抱えれば、独身では存在しなかった巨大なリスクを背負うことにもなる。

そして病気や障害、介護については、どちらが「支える側」になるかは事前には分からない。

結婚の本質は、単純な節税でも、孤独対策でもない。

一人なら自分だけで負う人生の利益とリスクを、もう一人の人間と長期間共有する選択である。

だから判断するときに重要なのは、「結婚にはメリットがあるか」だけではなく、

「この相手と、良い時だけでなく悪い時の人生まで共有したいか」

なのかもしれない。

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