ウクライナ軍の衛星通信を突然制限 過去にも遮断や支援停止、今回もトランプ氏の指示なのか?

ウクライナ軍の衛星通信を突然制限 過去にも遮断や支援停止、今回もトランプ氏の指示なのか?
ウクライナ軍の衛星通信を突然制限 「ホワイトハウスが指示」と報道、トランプ氏は否定。誰が決めた?

何が起きた?

2026年10月中旬、ウクライナ軍が利用する米国の軍事用衛星通信サービス「Starshield(スターシールド)」に、突然の利用制限が導入された。

通信端末を搭載したドローンなどが時速160kmを超えて移動すると、通信が切断されるというものである。

この影響で、ウクライナ軍がロシアの攻撃ドローンを迎撃する際などに支障が生じた。

10月15日、Reutersは米政府関係者ら3人の証言をもとに、通信制限を求める指示がホワイトハウス内部から出されたと報じた。

一方、トランプ米大統領は16日、自身やイーロン・マスク氏の関与を否定した。米政府高官も、大統領本人が制限を指示したことを否定している。

しかし、指示を出した人物や、制限を決定した理由は明らかになっていない。

今回の問題で注目されるのは、過去にもウクライナ向けの衛星通信が遮断されたと報じられ、トランプ政権が軍事支援や情報提供を実際に停止した経緯があることである。

簡単にいうと

Starshieldは、米国の宇宙企業SpaceXが開発した、政府や軍隊向けの衛星通信サービスである。

一般向けのStarlink(スターリンク)を基盤としており、ウクライナ軍はドローンの操作や部隊間の連絡などに利用している。

今回の制限は、インターネットの通信速度が単に遅くなるという話ではない。

通信端末を搭載した機体が一定の速度を超えると、接続が切断されるという問題である。

ロシア軍が使用するジェット推進型の攻撃ドローンには、時速400km以上で飛行するものもある。

こうした機体を迎撃するドローンが時速160kmを超えると通信できなくなれば、敵に追いついて撃墜することが難しくなる。

10月16日時点で一部の通信障害は改善されたものの、時速160kmの制限は残っていた。

Starshieldの運用には米国政府が深く関わっており、利用条件の変更はウクライナ側だけでは解決できない。

つまり、ウクライナ軍の重要な通信設備が、米国側の判断によって使いにくくなる状況が発生したのである。

2022年にはStarlinkが実際に遮断されていた?

今回の出来事に先立ち、Starlinkがウクライナ軍の作戦中に意図的に遮断されたとする報道がある。

2025年7月25日、Reutersは独自調査によって、2022年9月下旬にイーロン・マスク氏がウクライナの一部地域でStarlinkの接続を停止するよう命令していたと報じた。

当時、ウクライナ軍はロシア軍が占領していた南部ヘルソン州などで反攻作戦を進めていた。

Reutersによると、マスク氏はSpaceXの幹部技術者に対し、ヘルソン州などの衛星通信の提供を止めるよう指示したという。

この命令によって少なくとも100台のStarlink端末が使えなくなり、ウクライナ軍の通信やドローンによる偵察、砲撃の調整に支障が生じたとされる。

ウクライナ軍関係者は、通信が失われたことでロシア軍部隊の包囲作戦が失敗したと証言している。

Reutersは命令を知る関係者3人などの証言をもとに報じているが、SpaceXは報道内容が不正確だと反論した。ただし、具体的にどの部分が誤っているのかは説明していない。

マスク氏が接続を止めた理由については、ウクライナ軍の反攻によってロシアが核兵器を使用する事態を懸念していた可能性が指摘されている。

この出来事はトランプ政権による指示ではなく、当時のSpaceX側の判断だったと報じられている。

それでも、ウクライナ軍が戦場で利用する通信網を、サービスを提供する側の判断で遮断できることを示す事例である。

2025年にはトランプ政権が軍事支援を停止していた

さらに重要なのが、2025年2月から3月にかけて起きた出来事である。

2025年2月21日、Reutersは米国の交渉担当者がウクライナとの鉱物資源協定をめぐり、Starlinkの接続停止を交渉材料にしていたと報じた。

関係者によると、ウクライナが米国の求める協定に応じなければ、Starlinkの利用を停止する可能性があると伝えられたという。

ただし、マスク氏はこの報道を否定しており、当時Starlinkが実際に停止されたことも確認されていない。

その1週間後の2月28日、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談が行われた。

会談では、ロシアとの和平交渉や米国による安全保障をめぐって両首脳が激しく口論となり、予定されていた鉱物資源協定の署名は見送られた。

そして3月3日、トランプ政権はウクライナへの軍事援助を一時停止した。

さらに3月5日には、CIA長官のジョン・ラトクリフ氏が、トランプ大統領の指示でウクライナとの機密情報の共有を停止したことを認めた。

3月7日には、米国家地理空間情報局(NGA)が、米政府の契約を通じて提供していた商用衛星画像システムへのウクライナのアクセスを停止したことも明らかになった。

これはStarlinkの通信回線ではないが、衛星から撮影された画像を軍事目的などで利用できる重要なサービスである。

つまり、トランプ政権は2025年、ウクライナへの軍事援助、機密情報、衛星画像の提供を実際に制限したのである。

その後、3月11日にウクライナが米国の提案する30日間の停戦案を受け入れる用意を示すと、米国は軍事援助と情報共有の再開を決定した。

この経緯は、トランプ政権がウクライナに交渉を促すため、軍事上の支援を停止する手段を実際に使ったことを示している。

今回もトランプ氏が指示した可能性はあるのか?

過去の経緯を踏まえると、今回の通信制限にトランプ氏や政権高官が関与した可能性は、検証すべき重要な問題である。

特に注目されるのが、制限が導入された直前の米国とウクライナの政治的対立である。

トランプ大統領は、ウクライナがロシアの製油所などへの攻撃を続けていることに不満を示していた。

こうした攻撃が燃料価格を押し上げていると主張し、ウクライナに攻撃の停止を求めていたのである。

10月9日にマイアミで行われた協議でも、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏や政権特使のスティーブ・ウィトコフ氏が、ロシアの製油所への攻撃継続に不満を示したと報じられている。

米国はロシア産ディーゼル燃料の取引を進めており、ロシアとの和平交渉につなげたい考えも示している。

そうした状況で、10月12〜14日ごろにウクライナ軍の衛星通信に制限が生じた。

さらにReutersは、今回の制限を求める指示がホワイトハウス内部から国防総省幹部に伝えられたと報じている。

2025年には軍事支援を実際に停止した前例があるため、今回もウクライナにロシアへの攻撃を控えさせるための政治的圧力だったのではないかという疑問が生じる。

ただし、ここには重要な問題もある。

ウクライナ大統領顧問のセルヒー・ベスクレストノフ氏によると、Starshieldはロシア領内では使用されておらず、ロシアの製油所を攻撃するドローンには通信を提供していないという。

仮にロシアの製油所への攻撃を止めることが目的だったとしても、今回の制限はその攻撃を直接止めるものではない。

むしろ、ロシアの攻撃ドローンからウクライナを守る迎撃機にも影響が出ている。

一方、通信制限が契約条件や技術設定の変更によるものだった可能性も排除できない。

また、ホワイトハウスから指示が出たという報道が事実であっても、それだけでトランプ大統領本人が命令したと断定することはできない。

米国では大統領が軍の最高司令官を務めるが、政府や軍の高官が与えられた権限の範囲で判断する場合もあるためである。

現時点では、誰が最終決定し、どのような目的で制限を導入したのかは確認されていない。

この問題を受け、10月15日には共和党と民主党の米上院議員9人が、国防総省の監察官に調査を要請した。

議員らは、米政府関係者による指示や承認の有無、SpaceXによる独自判断の可能性、制限と情報共有の障害が関連していたのかなどを調べるよう求めている。

今回の問題は、単に民間企業の衛星通信サービスに依存する危険性だけではない。

2022年にはSpaceX側の判断による通信遮断が報じられ、2025年にはトランプ政権が軍事援助や情報提供を実際に停止した。そして2026年には、ホワイトハウスからの指示が報じられる新たな通信制限が起きた。

それぞれの出来事は決定者も事情も異なり、同じ原因だったとはいえない。

しかし、ウクライナ軍の重要な通信・情報手段が、ウクライナ以外の政府や企業の判断によって制限され得るという共通点がある。

今回も政治的な圧力だったのか、トランプ氏本人がどこまで関与していたのか。

過去の前例を踏まえると、通信制限の決定過程を明らかにすることが、特に重要な焦点となる。

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