AI料理写真はなぜ嫌われる? マクドナルドの“盛った写真”との決定的な違い

AI料理写真はなぜ嫌われる? マクドナルドの“盛った写真”との決定的な違い

何が起きた?

飲食店のメニューや広告で使われるAI生成の料理画像に対し、「気持ち悪い」「食欲がわかない」「何が出てくるのか分からない」と反発する人が増えている。

CNNは2026年9月2日、米国の飲食店などで使われるAI生成メニュー画像を取り上げた。見た目は一見おいしそうでも、よく見ると肉や野菜の質感がおかしかったり、食材が不自然につながっていたりする画像がSNSで話題になっているという。

しかし、「広告写真と実物が違う」という問題そのものはAI以前から存在した。

日本でもファストフードの商品写真を見て、

「写真ではふっくらしているのに、買ったらぺしゃんこだった」

と感じた経験がある人は少なくないだろう。

では、従来の“盛った商品写真”とAI生成画像では何が違うのだろうか。

簡単にいうと

大きな違いは、写真には少なくとも撮影された実物が存在するが、AI画像には元になった実物が存在しなくてもよいことだ。

たとえば広告用のハンバーガーなら、実際の商品と同じ食材を使いながら、レタスをきれいに見せ、バンズの位置を調整し、具材がよく見えるように撮影できる。

かなり「盛って」はいるものの、

「実在するハンバーガーを最高にきれいな状態にしたもの」

ではある。

一方、生成AIなら、店が一度も作ったことのない料理でも、

「肉汁たっぷりの巨大ハンバーガー」

「大きなエビが山ほど入ったパスタ」

と指示するだけで写真のような画像を作れてしまう。

つまり、

従来の広告写真=実物の理想形

に対して、

AI画像=実物が存在するとは限らない完成予想図

になり得る。

ここが、単なる「写真と実物の差」以上の問題なのである。

それで何が変わる?

AI画像が広がると、料理写真が持っていた意味そのものが変わる可能性がある。

これまで写真を見る人は無意識に、

「多少きれいに撮っているだろうが、こういう料理を実際に作ったのだろう」

と考えることができた。

AIでは、その前提が成立しない。

メニューに巨大なステーキの画像があったとしても、その店がそのステーキを調理したことがあるとは限らない。

店に同じ皿がなくても、同じ食材がなくても、写真のような画像だけなら生成できる。

そのため客側には、

「この写真は実際の商品を示しているのか、それとも単なるイメージなのか」

という新しい疑問が生まれる。

そして料理は、服や家具以上にこの問題が敏感になりやすい。

料理写真は「デザインの参考」ではなく、多くの場合、これから自分が注文して口に入れるものを確認するための情報だからだ。

マクドナルドの写真は本当に「詐欺」なの?

ここは慎重に区別する必要がある。

マクドナルドの商品写真が「詐欺だった」と確認されたわけではない。

ただし、広告写真と店頭の商品に見た目の差が生じることは、日本マクドナルド自身が公式FAQで認めている。

同社によると、広告用画像にも実際の商品と同じ分量・食材を使用している。

その一方で、撮影時にはバンズをずらしたり、具材を中から支えたりして、時間をかけて美しく撮影しているという。

店頭の商品については、包装によって高さが抑えられる場合もあるとしている。

つまり広告用の商品は、

材料を偽物に置き換えているわけではないが、通常の店頭商品よりはるかに撮影向きの状態に整えられている。

このため、ネットで俗に「写真詐欺」と呼ばれるほど実物との差を感じる人がいても不思議ではない。

ただし正確には、

「実物とは無関係な偽物の写真」

ではなく、

「同じ材料を使った商品を、広告用に最大限きれいに見せた写真」

と表現するほうが適切である。

そして、この違いこそAIとの比較では重要になる。

AI画像は何が違う?

AI料理写真への反発には、少なくとも二つの問題が重なっていると考えられる。

一つは単純に、食べ物として微妙におかしい画像が不快に感じられることだ。

2026年8月に科学誌Scientific Reportsに掲載された研究では、87人に実写とAI生成による60組の食品画像を評価してもらった。

その結果、AI画像は平均すると実写より「現実的ではない」と評価され、さらに「食べたい」という評価も低かった。

一方で、カロリー量や健康的かどうかの推定には大きな違いが見られなかった。

つまり人間は、

「これはケーキだ」

「これは高カロリーだろう」

とは理解できても、

「なんとなく食べたくない」

と感じる場合がある。

食べ物は腐敗や異物を避ける必要があるため、人間は表面の質感、形、色、湿り気などの小さな異常にも敏感ではないかという仮説も研究者から示されている。

ただし、AIだから必ず不味そうに見えるわけでもない。

2024年の別の研究では、画像がAI生成だと知らされていない場合、AI食品画像が実写より好まれるケースも確認された。

ところが画像の出所を明らかにすると、「本物の写真」と知らされた画像の魅力度が上がった。

つまり反発の一部には、

見た目そのものへの嫌悪だけでなく、「これはAIで作ったものだ」と知ったことによる心理的な不信感も含まれている可能性がある。

ここまで考えると、「昔の広告写真も実物と違ったのだからAIも同じ」という単純な話ではない。

従来の食品広告にも誇張はあった。

だが、基本的には、

現実の商品 → きれいに整える → 撮影する

という順番だった。

AIなら、

文章で指示する → 料理らしい画像が現れる

だけでも成立する。

実物を一度も作る必要がないのである。

だから問題の本質は、「AIを使ったかどうか」だけではない。

最も重要なのは、

メニューを見た客が合理的に期待する料理と、実際に提供される料理がどれだけ一致しているか

だろう。

実写でも極端に盛れば客を誤解させる。

反対にAI画像でも、あくまでイメージだと明確に示し、実際の商品を忠実に表しているなら問題は小さくなる。

AI時代になって問われているのは、「写真かAIか」というより、その画像を商品情報としてどこまで信用していいのかなのかもしれない。

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