カリフォルニア、16歳未満のSNS「依存機能」を禁止 AI会話おもちゃも2031年まで停止

何が起きた?
米カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は2026年9月10日、子どものSNSやAI利用を規制する一連の法律に署名しました。
特に大きいのが、16歳未満にSNSなどの「依存を促す機能」を提供することを禁止する「AB 1709」と、子ども向け玩具に人間のように会話するAIを組み込むことを2031年1月1日まで禁止する「SB 867」です。州政府は同日、子どものオンライン安全などに関係する計13本の法案への署名を発表しています。
ただし、「16歳未満はSNSを使えなくなる」という法律ではありません。
16歳未満でもアカウントを持つことはできますが、利用履歴などから次々と投稿をおすすめするフィードや動画の自動再生など、利用をやめにくくする機能を提供できなくなります。
簡単にいうと
これまでSNSでは、「次の動画」「あなたへのおすすめ」が延々と出てくることで、特に目的がなくても見続けてしまう仕組みが広く使われてきました。
たとえるなら、お菓子を一つ取るたびに自動で次のお菓子が目の前に出てくるようなものです。
カリフォルニア州は今回、子どもについては「本人の意思だけに任せるのではなく、そもそも止まりにくくする仕組みを制限しよう」と踏み込みました。
さらにAIについても同じ考え方が見えます。
問題にしているのは単に「AIを使うこと」ではなく、子どもが長時間使い続けたり、AIを人間の友達のように感じて依存したりするような設計です。
それで何が変わる?
AB 1709では、16歳未満に対して「addictive feature(依存を促す機能)」を提供できなくなります。
法律で具体的に挙げられているのは、利用者の過去の行動やプロフィールなどを使って投稿を選ぶ「依存性のあるフィード」と、動画などを次々と再生する「自動再生」です。
一方、投稿を時系列で見る、特定の投稿者の作品を見る、検索した結果を見る、友人と直接メッセージを送るといった利用まで一律に禁止するものではありません。
違反した事業者には、故意の場合は影響を受けた未成年者1人につき最大5万ドル、過失の場合でも最大2万5000ドルの民事制裁金が科される可能性があります。
つまり、SNSそのものを子どもから取り上げるというより、
「見るのをやめにくくする仕組み」を子ども向けには外す
という規制です。
「無限スクロール禁止」は少し違う
今回のニュースを「16歳未満の無限スクロール禁止」と表現する報道もありますが、成立した法律を見ると少し注意が必要です。
法律の前半では、利用者を長く滞在させる設計の例として「アルゴリズムによる推薦」「無限スクロール」「自動再生」「通知」が挙げられています。
しかし、実際に「依存を促す機能」として法律本文で明示されているのは、依存性のあるフィードと自動再生です。無限スクロールそのものは、この列挙には入っていません。
ただし、州司法長官には今後、規則によって別の機能を「依存を促す機能」に追加する権限があります。
そのため現時点では、
「無限スクロールを全面禁止した」というより、「アルゴリズム推薦や自動再生など、依存を促すSNS設計を16歳未満に制限した」
と理解する方が正確です。
AIおもちゃだけでなく「AIとの関係」も規制へ
もう一つ注目されるのがSB 867です。
16歳未満の子どもが遊ぶために設計・販売される物理的な玩具に、「コンパニオン・チャットボット」を搭載することを2031年1月1日まで禁止します。製造だけでなく販売や販売目的での所持なども対象です。
ここでいうAIは、単に音声で命令すると答える機械ではありません。
人間のように自然に会話し、何度も会話を続けながら利用者との関係を維持し、「友達」のように社会的・感情的な欲求を満たすAIが対象です。普通の音声アシスタントや、ゲームの内容についてだけ答えるキャラクターなどは除外されています。
背景には、AI玩具が性的な話題や危険物について不適切な回答をしたとする調査などがあり、法案提出者は「安全基準を整備する時間が必要」と説明しています。
しかもカリフォルニア州は玩具だけでなく、18歳未満が使うAIコンパニオン全般を対象にした「Adam’s Law(SB 1119)」も成立させました。
2027年7月から、子どもがAIコンパニオンを使えるサービスでは、初期設定でプッシュ通知を無効にし、連続利用を1時間、1日の合計利用を2時間に制限する設定などが必要になります。保護者は設定を変更できますが、16歳未満についてはAIへのアクセス自体を停止できる仕組みも必要です。
さらにAIが子どもに恋愛感情を示す、AIへの感情的依存を促す、「自分だけがあなたを理解している」といった特別な関係を示唆する、過剰に褒める、保護者に隠して利用するよう勧める、といった行為にも安全対策を求めています。
今回の一連の法律で特に重要なのは、カリフォルニア州が「有害な投稿を消す」だけではなく、サービスが人を長く引きつける仕組みそのものを規制し始めたことです。
SNSなら「次も見たくなる仕組み」、AIなら「もっと話したくなる関係」。
子どもの安全をめぐる議論は、コンテンツの中身だけでなく、アプリやAIが人間の注意や感情をどこまで利用してよいのかという段階へ進み始めています。
情報源
- カリフォルニア州知事室「Governor Newsom signs the strongest child safety chatbot and social media laws in the nation」
- California Legislative Information「AB-1709 Covered platforms: age restriction: e-Safety Advisory Commission」
- California Legislative Information「SB-867 Toys: companion chatbots」
- California Legislative Information「SB-1119 Companion chatbots: children’s safety」
- California State Senator Steve Padilla「First-In-Nation AI Toy Moratorium Moves to Governor’s Desk」
- California State Senator Steve Padilla「Author of Proposed AI Toy Moratorium Calls for Greater Transparency into AI Toy Development」