AIの偽画像「自分は見破れる」と答えた人、61.5%が5問全問不正解 総務省調査

何が起きた?
総務省が2026年7月14日に公表した「ICTリテラシー実態調査」で、少し意外な結果が出ています。
AIで作られた偽の画像・音声・映像である「ディープフェイク」について、**「自分は見破ることができる」と答えた630人のうち、ICTリテラシーを測る5問のテストで全問不正解だった人が61.5%**に上りました。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)
調査は5月8~13日、全国の15歳以上の男女5640人を対象にインターネットで実施されました。
全体では5問全問不正解だった人は39.5%だったため、「見破れる」と考えている層の61.5%はかなり高い数字です。
簡単にいうと
たとえば詐欺について、**「自分は絶対に引っかからないから大丈夫」**と思っている人ほど、相手を疑う手順を省いてしまうことがあります。
今回の調査が示しているのも、それに少し似た構図です。
重要なのは、「AI画像を見る目」を持っていると思うことより、「自分も間違えるかもしれない」と考えて情報を確認することなのかもしれません。
実際、調査では自分のICTリテラシーを「平均的または平均より高い」と考えている人が83.0%いました。
一方で、5問のリテラシーテストを全問正解できた人はわずか5.6%でした。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)
それで何が変わる?
これからAIで作られた画像や動画が増えるほど、「画像そのものを見て偽物かどうか判断する」という考え方だけでは危険になります。
昔のAI画像なら、指の本数がおかしい、文字が崩れている、背景が不自然といった分かりやすい失敗がありました。
しかし、生成AIの性能が上がれば、こうした特徴が必ず現れるとは限りません。
そのため、重要になるのは画像の細部を凝視することよりも、
- 誰が最初に公開したのか
- 元の情報はどこにあるのか
- 他の信頼できる媒体も報じているか
- 日時や場所は一致しているか
- 過去の画像を別の出来事として使っていないか
といった画像の外側にある情報を確認することです。
内閣官房も偽情報への対処として、情報源や他のメディアを確認すること、画像検索で過去の画像の使い回しを調べることなどを挙げています。(内閣官房)
「61.5%」は何を意味する?
ここは誤解しやすいところです。
今回の調査は、630人にAI画像を見せて「本物か偽物か」を判定させ、その61.5%が失敗したという実験ではありません。
「自分はディープフェイクを見破れると思うか」という自己認識と、別に実施した5問のICTリテラシーテストの成績を比べたものです。
テストでは、偽情報が拡散される仕組み、SNSのアルゴリズム、情報源の確認、複数の情報を比較する重要性などが問われました。
したがって、
「AI画像を見破れると思う人は、本当にAI画像を見破れない」
とまで今回の調査だけで断定することはできません。
また、
「自信を持つとICTリテラシーが下がる」
という因果関係が証明されたわけでもありません。
分かったのはあくまで、「自分は見破れる」と考える人の集団で、リテラシーテストの成績が低い傾向が見られたということです。
本当に必要なのは「自分もだまされる」という前提
今回の調査では、さらに興味深い結果があります。
インターネットやSNSで偽・誤情報に触れている可能性があると考えている人は80.6%いましたが、自分自身が信じたり、だまされたりする可能性があると答えた人は56.4%に下がりました。
また、偽・誤情報を実際に拡散した経験のある人では、ICTリテラシーテストを全問不正解だった割合が48.9%でした。
拡散していない人では24.7%だったため、およそ2倍の差があります。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)
総務省は「認知バイアス」にも注目しています。
認知バイアスとは、自分の考えに合う情報だけを信じやすくなるなど、誰にでも起こる「考え方のくせ」です。
調査では、認知バイアスについて単に知識として知っているだけでなく、「自分にもそういう偏りがある」と自覚することが、慎重な情報判断や拡散抑制につながる可能性があるとしています。
AI時代に一番危険なのは、「偽物が巧妙になること」だけではないのかもしれません。
「自分なら見破れる」と思った瞬間に、確認する必要がないと思ってしまうこと。
AI画像を見る目を鍛えること以上に、「自分の目も間違える」という前提で情報源を確かめる習慣の方が、長く使える対策になりそうです。