デパスは「ヘロイン並みに危険」なのか? 米国で最も厳しい規制になった本当の理由

デパスは「ヘロイン並みに危険」なのか? 米国で最も厳しい規制になった本当の理由

何が起きた?

日本で「デパス」の商品名で知られるエチゾラムが、米国で最も厳しい規制区分「Schedule I」に指定されたことが注目されています。

米麻薬取締局(DEA)は2026年3月2日、エチゾラムなど5物質をSchedule Iへ恒久的に指定する最終規則を公表し、4月1日に発効しました。

Schedule IにはヘロインやLSDなども含まれます。そのため「日本では不眠や頭痛などに処方される薬が、米国ではヘロインと同じ扱い」と聞けば、非常に危険な薬のように感じるかもしれません。

しかし、「同じ規制区分=同じ危険性」ではありません。

一方で、デパスに依存や離脱症状のリスクがあることも事実です。日本でもすでに規制や注意喚起が強化されています。

簡単にいうと

米国のSchedule Iは、薬の「危険度ランキング」ではありません。

たとえるなら、「ヘロインとデパスの危険度を比べて、同じ点数だった」という分類ではなく、米国の法律上、通常の医療用医薬品として扱えないグループに一緒に入っていると考える方が近いでしょう。

DEAはエチゾラムについて、乱用の可能性があることに加え、米国内で現在認められた医療用途がなく、FDAが医薬品として承認していないことなどをSchedule I指定の理由としています。

日本では事情が異なります。

エチゾラムは医療用医薬品として承認されており、不安や睡眠障害だけでなく、頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛に伴う不安や筋緊張なども正式な適応となっています。

したがって、

「米国ではヘロインと同じSchedule Iだから、デパスもヘロイン並みに危険」

という説明は正確ではありません。

それで何が変わる?

日本で医師から適切に処方されているデパスを飲んでいる人が、今回の米国の規制を理由に突然服用をやめる必要はありません。

むしろ、長期間飲んでいる人が自己判断で急に中止する方が危険な場合があります。

PMDAはエチゾラムについて、連用によって薬物依存を生じることがあるとして、漫然とした長期使用を避けるよう注意しています。

さらに、服用量を急激に減らしたり突然中止したりすると、

  • けいれん発作
  • せん妄
  • 手足の震え
  • 不眠
  • 不安
  • 幻覚
  • 妄想

などの離脱症状が現れることがあるとしています。

つまりデパスの本当の注意点は、「飲んだだけで非常に危険」というより、効き目を感じやすい薬を長期間使い続け、依存した状態になる可能性があることです。

日本でも2016年にエチゾラムは第三種向精神薬に指定され、保険診療での処方は原則30日分までに制限されています。

本当に危険なのはどんな使い方?

デパスは普通の薬と同じように副作用があり、特に長期使用には注意が必要です。

現在の添付文書でも、依存性だけでなく、呼吸抑制などが重大な副作用として記載されています。

また、アルコールと一緒に摂取すると中枢神経を抑える作用が強まり、精神機能や知覚・運動機能が低下するおそれがあります。他の中枢神経を抑える薬との併用でも作用が強くなる可能性があります。

一方、「頭痛や肩こりにデパスが処方されること自体がおかしい」というわけでもありません。

日本では、頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛に伴う筋緊張などが正式な適応に含まれています。筋肉の緊張を緩める作用があるためです。

問題になるのは、

「以前から飲んでいるから」

「よく眠れるから」

「肩こりが楽になるから」

といった理由だけで、治療の必要性を十分に見直さず長期間続けることです。

厚生労働省・PMDAが「漫然とした継続投与による長期使用を避ける」と明記しているのも、このためです。

なぜ日本と米国で扱いがこんなに違う?

最大の理由は、デパスが両国でまったく違う歴史を歩んできたことです。

日本ではエチゾラムは医療用医薬品として長年使用されてきました。現在も医師が患者の症状に応じて処方できます。

一方、米国ではエチゾラムはFDA承認薬ではありません。

米国では正規の医療用医薬品ではなく、違法市場などを通じて流通する「デザイナーベンゾジアゼピン」の一つとして問題になってきました。

DEAも、乱用の可能性に加え、「米国内で現在認められた医療用途がない」ことをSchedule I指定の判断材料にしています。

しかも国際的な分類を見ると、エチゾラムは2020年に国連の1971年向精神薬条約のSchedule IVに加えられました。WHOは依存や乱用、公衆衛生上のリスクを認めつつ、医薬品として利用されていることも踏まえて評価しています。

つまり今回の話から読み取るべきなのは、

「デパスはヘロイン並みの薬だった」ではなく、「依存性を持つ薬であり、国によって医療上の位置づけや流通実態が大きく違う」

ということです。

日本でもすでに規制や長期使用への警告は強化されています。

現在服用している人にとって重要なのは、怖くなって突然やめることではありません。長期間服用していて不安がある場合には、使用を続ける必要性や減量の方法について医師や薬剤師と相談することが重要です。

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