ハロウィンジャンボ発売 300円の期待値は約142円、それでも人が宝くじを買う理由

ハロウィンジャンボ発売 300円の期待値は約142円、それでも人が宝くじを買う理由

何が起きた?

2026年9月16日、「ハロウィンジャンボ宝くじ」が全国で発売された。価格は1枚300円で、販売は10月16日まで、抽せんは10月26日に行われる。

1等は2億円で12本。1等の前後の番号に各1億円が設定されており、連番で購入して1等と前後賞のすべてに当たれば、合計4億円となる。

ただし、公表されている発売予定額360億円、12ユニットを前提にすると、1等は1,000万枚に1本である。

さらに、すべての賞金を合計して計算すると、300円のくじ1枚から戻ってくる金額の期待値は約142円となる。

つまり、金銭的な期待値だけを見れば明らかに購入者側が不利な商品である。

では、なぜそれでも多くの人が宝くじを買うのだろうか。

簡単にいうと

宝くじは、単純に「300円を増やすための商品」と考えると分かりにくい。

むしろ、

300円を払って「もし4億円当たったら」という夢を楽しむ商品

と考えると理解しやすい。

たとえば映画館では、料金を払っても上映後にお金が戻ってくるわけではない。それでも、映画を見ている時間を楽しめるため、人はお金を払う。

宝くじにも似た面がある。

買った瞬間から抽せんまで、「家を買おう」「仕事を辞めよう」「旅行しよう」と想像できる。その時間自体に娯楽としての価値を感じる人がいるのである。

実際、海外の実験研究では、宝くじを持っている人は抽せん前の幸福感が高まり、当せんを待っている間の「希望」や「ワクワク」が宝くじの魅力の一部になっていることが示されている。

それで何が変わる?

今回のハロウィンジャンボでは、発売予定の1億2,000万枚すべてを前提にすると、販売総額は360億円となる。

公表されている各賞金を合計すると約170億3,880万円であり、理論上の賞金への還元率は約47.3%である。

つまり300円について、平均すると約142円が賞金として戻り、残る約158円は賞金以外に回る計算になる。

これはハロウィンジャンボだけが特別に低いわけではない。

宝くじ公式サイトによると、2024年度の宝くじ全体では販売額7,598億円のうち46.5%が当せん金となった。一方、36.2%は自治体の収益金、16.0%は印刷費や販売手数料など、1.3%は社会貢献広報費に使われている。

したがって、宝くじを「資産を増やす方法」として見るなら、かなり不利である。

一方で、自治体にとっては公共事業などに使える収入源にもなっている。

なぜ「ほとんど当たらない」のに魅力を感じる?

理由の一つとして知られているのが、人間は非常に小さな確率を心理的に大きく感じることがあるという性質である。

行動経済学では「確率加重」などと呼ばれる。

たとえば、

「1,000万分の1で2億円」

と聞けば、数学的にはほぼ当たらない。

しかし人間は必ずしも、

「0.00001%だから無視しよう」

とは考えない。

「可能性はゼロではない」

という部分に強く反応することがある。

2024年に学術誌「The Review of Economic Studies」に掲載された米国の宝くじ研究でも、宝くじの購入行動には、低確率の出来事の捉え方や統計的理解などに関係する行動上の偏りが大きく影響していると分析されている。

研究では、こうした偏りがなければ宝くじへの支出は43%ほど少なくなるとの推計も示された。

ただし、それでも残る購入理由がある。

それが「娯楽」や「当たるかもしれないという期待」である。

つまり人々は必ずしも、「期待値がプラスだ」と勘違いして宝くじを買っているわけではない。

損する可能性が高いと知ったうえで、巨大な上振れの可能性を楽しんでいる人もいるのである。

宝くじを買うのは「合理的ではない」のか?

ここは目的によって答えが変わる。

「お金を増やしたい」という目的なら、期待値が約142円しかない商品に300円を払い続けるのは効率的とは言いにくい。

10枚なら3,000円、100枚なら3万円である。購入枚数を増やせば当せん確率は上がるが、平均的に失う金額も同じように増えていく。

しかし、

「年に一度、3,000円で当せん発表まで夢を見る」

という娯楽なら話は別である。

研究でも、宝くじ参加そのものから楽しさを得ている人がいることが確認されている。

つまり宝くじには二つの顔がある。

投資として見ればかなり不利だが、娯楽として見れば、本人が300円分楽しめるかどうかで価値が決まる。

昔から宝くじについて「夢を買う」と言われるのは、単なる宣伝文句とも言い切れない。

むしろ宝くじという商品の仕組みを、かなり正確に表しているともいえる。

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