長期金利3%って何が起きている? 国債価格が下がると利回りが上がる仕組み

何が起きた?
日本の10年国債の利回りが2026年9月1日、一時3%に達しました。3%台は1996年以来、およそ30年ぶりです。
国債市場では今、「3%なら十分に買いたい水準なのか」「さらに金利が上がる可能性があるのか」が注目されています。
ただ、ここで少し分かりにくいのが、
「国債の価格が下がると、金利=利回りは上がる」
という仕組みです。
普通の商品なら、価値が上がれば価格も上がりそうなものです。
なぜ国債では、価格と利回りが逆方向へ動くのでしょうか。
まずは国債そのものの仕組みから見てみます。
簡単にいうと
国債とは、簡単にいえば「国にお金を貸した証明書」です。
例えば額面100円、表面利率1%の国債なら、決められた利息を受け取り、満期になれば原則として額面の100円が返ってきます。
ところが、その後に市場の金利が上昇し、新しく発行される国債の条件がもっと有利になったらどうでしょう。
仮に、
古い国債 → 100円に対して年1円の利息
新しい国債 → 100円に対して年3円の利息
だとします。
同じ100円を払うなら、利息の多い新しい国債を選びたいと考える人が増えるでしょう。
そこで古い国債は、
「100円では買いたくないけれど、もっと安ければ買う」
となります。
例えば100円だった国債が90円まで下がれば、同じ利息を受け取りながら、満期には100円が返ってきます。
そのため、
国債価格が下がる
↓
購入価格に対して得られる収益が大きくなる
↓
利回りが上がる
という関係になります。
日本銀行も、国債価格が上昇すると利回りは低下し、逆に価格が下落すると利回りは上昇すると説明しています。
ここで重要なのは、ニュースでいう「長期金利3%」は、政府が突然、
「今日から国債の利息を3%にします」
と決めた数字ではないことです。
市場で国債が売買された結果として決まる利回りなのです。
それで何が変わる?
実際に9月1日に行われた10年国債の入札を見ると、この仕組みがよく分かります。
今回発行された10年国債の表面利率は年2.7%でした。
ところが、額面100円に対する平均落札価格は97円76銭でした。
100円より安く買えるため、
2.7%の利息
に加えて、
97円76銭で買った国債が満期には100円で償還される分
も収益になります。
その両方を含めて計算した平均利回りが2.995%です。
つまり、
表面利率は2.7%
でも、
実際の投資収益率である利回りは約3%
になるわけです。
逆にいえば、現在の市場では、額面100円に対して97円台まで価格が下がることで、10年国債の利回りが約3%になる水準まで来ているということです。
今回ニュースになっている「3%」を見るときは、
国債そのものに3%の利息が付いた
のではなく、
市場が国債に約3%の利回りを求めるようになった
と考えると分かりやすいでしょう。
国債価格が下がったら、持っている人は損するの?
ここは少し注意が必要です。
例えば銀行が100円で買った国債が、市場では90円でしか売れなくなったとします。
その時点で売れば、10円の損になります。
売らなくても市場価値は下がっているため、いわゆる含み損が発生します。金融機関の場合は、国債の保有目的や会計上の扱いによっては評価損などが問題になることもあります。
一方で、途中で売らずに満期まで保有し、国が予定通り償還すれば、固定利付国債は基本的に額面で返ってきます。
つまり、
「市場価格が10円下がった」=「10円がそのまま永久に失われた」
とは限りません。
問題になるのは、途中で売る必要が生じた場合や、大量の国債を保有する金融機関の資産価値が大きく下がった場合などです。
なお、一般の人が購入できる「個人向け国債」は通常の市場で売買される国債とは仕組みが異なります。
そのため、10年国債の市場価格が下落したからといって、個人向け国債の元本が同じように値下がりするわけではありません。
3%なら、むしろ買いたい人が増えるのでは?
ここが今回のニュースで一番面白いところです。
基本的には、その通りです。
国債価格が下がって利回りが上がれば、
「3%も得られるなら買おう」
と考える投資家は増えやすくなります。
実際、9月1日の10年国債入札では、価格競争入札で6兆5385億円の応募があり、1兆9896億円が落札されました。
Reutersも、金利が3%まで上昇する中でも今回の入札にはなお一定の需要があったと伝えています。
したがって現時点で、
「日本国債を誰も買いたくない」
という状態ではありません。
さらに、日本の金利が上昇したことで、これまで海外債券へ多く投資してきた日本の機関投資家が、国内債券へ資金を戻す動きも出ています。
Reutersによると、日本の投資家は2026年に海外債券を売り越しており、国内債券の利回り上昇や為替ヘッジコストの高さなどを背景に、企業年金などでも国内債券への配分を増やす動きがみられます。
では、なぜ市場が警戒しているのでしょうか。
問題は、
「3%で十分なのかが、まだ分からない」
からです。
例えば今日、利回り3%の10年国債を買ったとします。
ところがその後、インフレがさらに強まり、日銀の利上げや財政への警戒などから市場金利が4%まで上昇したとします。
すると、今日3%で買った国債は相対的に魅力が低くなるため、市場価格はさらに下がります。
そう考える投資家は、
「3%になったから今買おう」
ではなく、
「もう少し待てば、もっと高い利回りで買えるかもしれない」
と考えることがあります。
買い手が様子見をすれば、国債価格がさらに下がり、利回りがさらに上昇することもあります。
つまり市場が探しているのは、
「どのくらいの利回りなら、日本国債を十分買いたいと思う投資家が増えるのか」
という水準です。
本当に見るべきなのは「3%」より、その先
長期金利が3%になったからといって、それだけで「日本国債が危険な状態になった」と判断するのは早すぎます。
金利上昇には、物価や賃金の上昇、日銀による金融政策の正常化など、長年続いた超低金利から抜け出しているという面もあります。
一方で、今後、
財政への不安が強まる
↓
投資家がさらに高い利回りを求める
↓
国債価格が下がる
↓
長期金利がさらに上昇する
という流れが長く続けば、影響は大きくなります。
政府が新しく国債を発行したり、満期を迎えた国債を借り換えたりするときの金利も高くなり、時間をかけて国の利払い負担が増えていきます。
企業の借入金利や固定型住宅ローンなど、民間のさまざまな金利にも上昇圧力がかかります。
さらに国債だけで高い利回りを得られるようになれば、
「リスクを取って株を買うより、安全性の高い国債を持ちたい」
と考える投資家が増える可能性もあります。
だから今回、本当に注目すべきなのは、
「3%という数字そのもの」
だけではありません。
重要なのは、
3%前後で買い手が増えて金利が落ち着くのか
それとも、
さらに高い利回りを求める動きが続くのか
です。
日本では長い間、10年国債の利回りが極めて低い状態が続いてきました。
今回の3%到達は、そうした「超低金利が当たり前だった日本国債市場」が大きく変わりつつあることを示す節目といえそうです。