15歳の読解力と数学、OECD平均が過去最低 日本は1位でも「苦手な子」が増加

何が起きた?
OECDは2026年9月8日、世界の15歳を対象にした国際学力調査「PISA 2025」の結果を公表しました。
91の国・地域から約76万人が参加し、OECD加盟国の平均得点は読解力461点、数学的リテラシー463点となりました。どちらもPISAでこれまでに記録された中で最も低い水準です。
2015年と比べると、OECD平均は読解力で28点、数学で22点低下しました。OECDは、それぞれおよそ1年半、1年余りの学習差に相当すると説明しています。
一方、日本は読解力503点、数学525点、科学538点。3分野すべてでOECD加盟国中1位となり、全参加国・地域で見ても読解力4位、数学5位、科学5位でした。
ただし、日本でも2022年から読解力が13点低下しており、特に成績の低い生徒が増えていることが分かりました。
簡単にいうと
クラス全体の平均点だけを見ると、日本は世界トップクラスです。
しかし教室を詳しく見ると、「できる生徒は今まで通りできているのに、苦手な生徒の成績がさらに下がっている」という変化が起きています。
日本の読解力で、基礎的な水準に届いていない「レベル1以下」の生徒は、2022年の13.8%から2025年には18.6%へ増えました。
およそ7人に1人から、5人に1人近くまで増えたことになります。
反対に、高得点層の割合には統計的に明確な変化はありませんでした。日本の問題は「全員の学力が一斉に落ちている」というより、苦手な生徒が取り残される方向に動いていることにあります。
それで何が変わる?
PISAは学校で習った知識を覚えているかだけを調べるテストではありません。
文章から必要な情報を読み取る、数字を使って現実の問題を考える、情報が信用できるか判断するといった、日常生活や仕事にもつながる能力を調べています。
そのため基礎的な読解力や数学力を身につけられない若者が増えれば、学校の成績だけの問題では済みません。ネット上の情報を正しく理解したり、契約や料金を比較したり、仕事で文章やデータを扱ったりする場面にも影響する可能性があります。
OECD加盟国全体では、科学・数学・読解の3分野すべてで基礎的な水準に届かない15歳が約5人に1人まで増えています。2022年には16%だったため、問題はさらに広がっています。
ただし、OECDが示す「1年半分の学習差」という数字は、一人ひとりの生徒が実際に1年半分の知識を失ったという意味ではありません。国際調査の平均得点の差を、学習期間に換算した目安です。
日本は1位なのに、なぜ安心できない?
日本で特に気になるのが、読解力の上位層と下位層の差です。
上位10%と下位10%の得点差は、2022年の249点から2025年には272点へ広がりました。
上位10%の位置にいる生徒は636点から631点で大きな変化がなかった一方、下位10%は387点から360点へ大きく低下しています。
つまり平均点の低下は、トップ層が急に読めなくなったというより、下の層の落ち込みが大きかったことを示しています。
しかも、日本では科学・読解力・数学の3分野すべてで低得点層の割合が2022年より有意に増えました。その一方で、高得点層の割合には有意な変化がありませんでした。
「日本はOECD1位」という結果と、「苦手な生徒が増えている」という結果は矛盾しません。
世界全体、とりわけOECD加盟国の成績も低下しているため、日本が相対的に上位を維持しながら、国内では問題が広がることは十分あり得ます。
なお、日本の読解力低下を単純に「長い文章が読めなくなった」と考えるのも正確ではありません。
比較的長い文章や複数の文章を使った問題の正答率は、2022年と比べて大きく変わりませんでした。「情報を評価し、熟考する」問題ではむしろ改善しています。
一方、短い文章を速く正確に処理する「読みの流ちょう性」の成績が低下しており、国立教育政策研究所は、これが日本の平均点低下に影響した可能性を指摘しています。
スマホやAIが原因なの?
「子どもがスマホばかり使うようになったから」「AIに答えを聞くようになったから」と考えたくなる結果ですが、現時点でそこまで単純には言えません。
OECDは、今回の読解力低下を一つの原因だけでは説明できないとしています。しかも学力低下は新型コロナによる休校より前から始まっており、「コロナ禍だけ」が原因でもありません。
OECD全体では、読書を楽しむ生徒の減少やスクリーン利用時間の増加と、読解力の低下が同時に起きています。また、文章を十分に読まず、短時間で間違った答えを選ぶ「性急な読み」も増えています。
AIについても、作文などでAIを使わない生徒の方が平均的には成績が高いという関連が確認されました。
しかし、これは「AIを使ったから成績が落ちた」という因果関係を証明したものではありません。頻繁にAIを使う生徒でも、AIの情報を評価する方法を学校で教わり、学習を助ける目的で使っている場合には、比較的良い結果も見られました。
重要なのは、スマホやAIを単純に禁止することよりも、自分で文章を読み、考え、分からないことに粘り強く取り組む時間を失わないことだと考えられます。
日本は依然として世界トップクラスです。しかし「平均点が高いから問題ない」ではなく、基礎的な読解や数学でつまずく生徒をどう支えるかが、今後の大きな課題になりそうです。