SteamでPvEが47%→58%に なぜ対戦ゲームは「疲れる」ようになったのか

SteamでPvEが47%→58%に なぜ対戦ゲームは「疲れる」ようになったのか

何が起きた?

Steamで、他のプレイヤーと勝敗を競うPvPよりも、コンピューターが操作する敵と戦ったり、仲間と協力したりするPvEゲームを遊ぶ割合が増えている。

ゲーム市場調査会社Newzooが100万人以上のプレイヤーデータを分析したところ、Steamユーザーが2時間以上遊んだタイトルのうち、完全なPvEゲームが占める割合は2021年の47%から2024年には58%へ上昇した。一方、純粋なPvPゲームは34%から30%へ減っている。調査対象は中国とインドを除く37市場である。

ここで注意したいのは、これは「プレイ時間の58%がPvE」という意味ではないことだ。2時間以上遊んだ「タイトル数」の構成なので、PvEゲームを何本も遊びながら、一つの対戦ゲームを何百時間も続けている人も含まれる。

ただ、2026年には別の興味深いデータも出ている。

Steam分析サービスCoilrが8358タイトルを調べたところ、レビュー1万件以上のゲームでは、Singleplayerタグの平均評価が86.2%の好評だったのに対し、Multiplayerは82.4%、Competitiveは80.0%、PvPは77.5%だった。小規模なゲームでも同じような順番が確認された。

もちろん、これだけで「PvPだから評価が低くなる」とは証明できない。しかしSteamでは、ゲームが対人競争寄りになるほど評価が低くなる傾向がかなりはっきり表れている。

簡単にいうと

Steamユーザーが「他人と遊ぶこと」を嫌いになったわけではなさそうだ。

むしろ、他人と一緒に遊びたいけれど、毎回勝敗や順位を競うことには疲れるという変化の方が近い。

たとえるなら、仕事から帰って「ちょっと公園でボールを蹴りたい」と思ったのに、毎回そこに順位表があり、負ければポイントが減り、チームメイトから怒られ、最新戦術まで勉強しなければならないようなものだ。

現代の対戦ゲームでは、単に相手を倒せばいいだけではない。

ランク、最新の強い戦術である「メタ」、味方への責任、暴言、チート、マッチメイキング、シーズン制やバトルパスなど、対戦そのもの以外にも気にすることが増えている

なぜ対戦ゲームは疲れやすい?

大きな違いの一つが「負けた後に何が残るか」だ。

シングルプレイなら、強いボスに10回負けても、基本的には自分だけの問題である。

しかしランク戦では、負ければランクポイントやMMRが下がる。さらにチーム戦では、自分の失敗によって味方のランクまで下げてしまう。

2026年に『League of Legends』を使って行われた実験では、同じような下手なプレイでも、競争性の高い状況ではプレイヤーから「受け入れられない」と判断されやすくなる傾向が確認された。

同じゲームを遊んでいても、「これは気軽な試合です」と「この試合で順位が変わります」では、味方のミスに対する受け止め方まで変わるわけだ。

さらに、上達するほど求められるものも増える。

『League of Legends』56万試合を分析した2026年の研究では、上位ランクになるほど、単純な撃破能力よりも、視界確保、アシスト、情報共有といったチームとしての協力行動が強くなることが確認された。

つまり上へ行くほど、「自分が上手ければいい」では済まなくなる。

そこへ定期的なバランス調整が加わる。

キャラクターや武器が弱体化されれば、以前覚えた戦い方が通用しなくなる。「久しぶりに遊ぼう」と思って戻ってきた人が、まず最新の強キャラ、武器、装備、マップ変更を調べるところから始めることも珍しくない。

ゲームを休むこと自体に「復帰のための勉強」が発生するのである。

暴言やチートは「対戦そのもの」への信頼を壊す

対戦ゲーム特有の問題として、さらに無視できないのが暴言だ。

2025年に発表された研究では、『Call of Duty: Modern Warfare III』の実際のプレイデータを使い、有害なボイスチャットにさらされたプレイヤーは短期的なゲームへの参加が低下することが確認された。

さらに、有害な発言を聞いたプレイヤー自身も、その試合で同様の発言をする可能性が高くなった。つまり暴言には「伝染する」性質まで見られた。

チートやスマーフも同じである。

対戦ゲームは「全員が同じルールで戦っている」という信頼があって初めて成立する。

Riot Gamesは2026年、同社の内部データでは『League of Legends』と『VALORANT』のPCランク戦の約0.7%で、後にチーターと判断されたプレイヤーが参加していたとしている。さらにVALORANTでは、ブースティングや勝敗操作、スマーフなどへの対策も強化している。

実際の割合以上に厄介なのは、「今の相手は単に強かったのか、それともチートやスマーフだったのか」が普通のプレイヤーには分からないことである。

対戦結果そのものを信用できなくなれば、勝敗を競う意味まで薄れてしまう。

「SBMMが悪い」は意外と単純ではない

対戦ゲームの不満としてよく挙げられるのがSBMM、つまり実力の近い相手同士を組み合わせるマッチメイキングだ。

「いつも自分と同じくらい強い相手ばかりなので、毎試合本気で戦わなければならない」という不満は理解しやすい。

しかし、実際のデータを見るとSBMMをなくせば解決するわけでもない。

Activisionは2024年、『Call of Duty: Modern Warfare III』の北米プレイヤーを使い、半数についてマッチングで実力を考慮する度合いを弱める大規模な実験を行った。

その結果、実力差を広げたグループでは、プレイヤーの90%に相当する実力帯で14日以内にゲームへ戻ってくる割合が有意に低下し、80%の実力帯で試合途中の離脱も増えた。

一方で、上位10%のプレイヤーには改善が見られた。弱い相手と当たりやすくなったためである。

逆に実力差を現在より厳しくすると、今度は上級者側への悪影響が確認された。

つまり、

実力差をなくしすぎても疲れる。しかし実力差を広げると、多くの中級・初心者がもっと嫌になる。

SBMMそのものが対戦ゲーム離れの犯人というより、「全員にとって気持ちのいいマッチング」を作ること自体が非常に難しいのである。

ライブサービス化で「遊ぶ」が「消化する」に変わった?

もう一つ大きいのが、対戦ゲームの多くがライブサービス型になったことだ。

シーズン、ランク更新、期間限定イベント、デイリー課題、バトルパス、新キャラクター、新武器などを継続的に追加し、何年も遊んでもらう仕組みである。

2026年に発表された研究では、209本のライブサービスゲームに投稿されたSteamレビュー約905万件を分析したところ、ライブサービスゲームではプレイ時間が長い一方、プレイ時間が増えるにつれてレビュー文章から読み取れる満足度がより低くなる傾向が確認された。

研究者はこれを「engagement-satisfaction paradox」、つまりたくさん遊んでいるからといって、満足しているとは限らない現象としている。

これは対戦ゲームに限った研究ではないが、現代のオンライン対戦ゲームには特に当てはまりやすい構造がある。

「今日は遊びたいから起動する」ではなく、

「ランクが落ちる前にやらないと」
「シーズンが終わる」
「バトルパスを終わらせないと」
「環境が変わる前に覚えないと」

となれば、娯楽だったゲームが少しずつ「消化しなければならない予定」に近づいていく。

PvPが終わったわけではない

だからといって、対戦ゲームそのものが衰退していると考えるのは早い。

『Counter-Strike 2』をはじめ、大規模な対戦・ライブサービスゲームはいまもPC市場の中心にあり、Newzooも2025年のプレイヤー活動は長寿命のライブサービス作品に強く集中していると分析している。

今回見えているのは、「みんなPvPをやめた」という現象ではない。

むしろSteamでは、PvPだけを延々と遊ぶスタイル以外の選択肢が増えたと考えた方がよい。

友人と協力して怪物を倒す。自分のペースで冒険する。失敗してもランキングが下がらない。数週間休んでも誰にも迷惑をかけない。

Newzoo自身も、SteamでPvEが増えている背景として、こうした「ソーシャル重視」のゲームが人気になっていることを挙げている。

つまりSteamユーザーが嫌になっているのは、必ずしも「他人と遊ぶこと」ではない。

他人と遊ぶたびに、勝敗、順位、責任、最新環境への追従まで要求されることに疲れ始めている可能性がある。

SteamでPvEゲームが47%から58%へ増えたという数字は、そんなゲームの遊び方の変化を映しているのかもしれない。

情報源