アメリカは中国にAI競争で負けそう? ベッセント財務長官が「負ければ全てが無意味」と警告

アメリカは中国にAI競争で負けそう? ベッセント財務長官が「負ければ全てが無意味」と警告

何が起きた?

アメリカのスコット・ベッセント財務長官は9月8日、中国とのAI開発競争について強い危機感を示しました。

ワシントンで開かれたイベントで、中国がAIでアメリカを追い越した場合、「他の全てが無意味になる」と発言。巨額の国防予算を持っていても、AIで大きく遅れれば安全保障上の優位を守れないという考えを示しました。

ただし、ベッセント氏は同時に「アメリカはリードしている」とも話しています。

つまり、「すでに中国に負けそうだ」と宣言したわけではありません。

問題は、かつて大きかった米中の差がかなり小さくなっていることです。

簡単にいうと

AI競争をマラソンにたとえると、アメリカはまだ先頭を走っています。

しかし以前はかなり後ろにいた中国が、いつの間にかすぐ近くまで追いついてきました。

しかも中国は、アメリカとまったく同じ走り方をしているわけではありません。

アメリカではOpenAI、Anthropic、Googleなどが最高性能のAIを競っています。一方、中国ではDeepSeekやAlibabaなどが、高性能なAIを比較的安く提供したり、企業が自由に改良しやすい「オープンウェイト」と呼ばれる方式で広めたりしています。

そのため競争は、

「世界で一番賢いAIはどれか」

だけではなく、

「世界中で最も広く使われるAIを誰が握るのか」

という段階に入っています。

それで何が変わる?

一般の人にとって重要なのは、この競争がAI企業だけの話ではなくなっていることです。

AIを大量に動かすには、巨大なデータセンター、発電所、送電網、半導体工場などが必要になります。

ところがアメリカでは、データセンターによる電力消費、電気料金への影響、水の使用、騒音などをめぐって住民の反発が強まっています。

特にテキサス州などでは、これまでデータセンター誘致に積極的だった政治家からも規制を求める声が出ています。

ベッセント氏も、データセンター企業や大手IT企業について、地域住民への説明が非常に不十分だったと批判しています。

一方でアメリカ政府からすると、建設を止めすぎればAIを動かす計算能力が増えず、中国に追いつかれるかもしれません。

つまり、

「AI競争には勝ちたい。しかし巨大データセンターを自分の町には建ててほしくない」

という難しい問題が起きています。

本当に中国はアメリカに追いついている?

AIモデルの性能だけを見ると、かなり接近しています。

スタンフォード大学の2026年版「AI Index Report」では、米中のトップAIモデルの性能差は事実上なくなったと評価されています。

2026年3月時点では、評価指標上の米国トップモデルと中国トップモデルの差は2.7%でした。

ただし、すべての評価で中国がそこまで接近しているわけではありません。

AI研究機関Epoch AIは別の評価方法を使い、2023年以降、中国の最先端モデルはアメリカの最先端に平均約7カ月遅れてきたと分析しています。

そのため、

「中国が完全に追いついた」と断定するのも、「まだ大差がある」と考えるのも正確ではありません。

少なくとも、AIモデルそのものでは中国を無視できないところまで差が縮まった、と考えるのが妥当です。

さらに中国製のオープンウェイトAIはアメリカ国内でも利用が増えており、米議会では中国製AIへの依存を警戒する動きまで出ています。

それでもアメリカには大きな強みがある

中国が接近しているとはいえ、アメリカが今にも負ける状況ではありません。

最大の強みの一つがAI半導体と計算能力です。

Epoch AIは2026年9月、中国Huaweiが2026年に供給するとみられるAI計算能力は、Nvidiaの4%未満になると推計しました。

推計には不確実性がありますが、中国がAIチップの性能や生産量で依然として大きな制約を抱えていることを示しています。

資金力でも差があります。

スタンフォード大学によると、2025年の民間AI投資額はアメリカが2859億ドル、中国が124億ドルで、アメリカは中国の23倍以上でした。

ただし、中国では政府系資金などもAI開発を支えているため、この数字だけで両国の総投資額を比較することはできません。

現在の米中AI競争をまとめると、

AIモデルの性能では中国がかなり接近している。
オープンウェイトAIでは中国が強い。
一方、半導体、計算資源、資金ではアメリカが依然として大きな優位を持っている。

という状態です。

ベッセント氏の「他の全てが無意味になる」という表現はかなり強いものですが、背景にある危機感は理解できます。

AIがサイバー防衛、兵器、科学研究、半導体設計、ロボット、製造業などあらゆる分野に入り込めば、AIの差がそのまま国力の差を広げる可能性があるからです。

今のところアメリカは先頭にいます。

しかし中国は、もう遠く後ろを走っている国ではありません。

今後の焦点は、「最高性能のAIを作る国」だけでなく、「安く大量にAIを普及させられる国」がどちらになるのかでしょう。

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