米国産「生ジャガイモ」輸入解禁を前倒しか ポテチ用はOKなのに、スーパー販売はなぜダメ?

何が起きた?
米国産の生鮮ジャガイモを、日本のスーパーなどで一般販売できるようにするための協議が進んでいる。
米国は2020年、日本に対して一般流通用の生鮮ジャガイモの輸入解禁を正式に要請した。農林水産省は病害虫のリスク評価を進め、2026年9月には次の段階である「病害虫リスク管理」に入った。
さらに共同通信は10月3日、当初は最終判断まで2~3年程度かかるとみられていたものの、米国側が日本の求める対策を早く整えれば、早ければ1年程度で判断される可能性があると報じた。
ただし、輸入解禁が決まったわけではない。これから日本と米国の間で、病害虫を持ち込まないために具体的にどんな条件を設けるのかを詰めていく段階だ。
簡単にいうと
実は、米国産の「生のジャガイモ」がすべて輸入禁止になっているわけではない。
日本は2006年から、ポテトチップスの原料として使う場合に限り、米国産の生鮮ジャガイモの輸入を認めている。
ただし条件はかなり厳しい。
病害虫が発生していない地域などで生産し、土を落とし、密閉型コンテナで日本へ運び、そのまま指定された加工施設へ搬入する。そして最終的には、130度以上の油に2分以上浸して加熱する。
加工後の残りかすについても焼却などの処理が行われる。
つまり現在の制度は、
「ジャガイモに万一病害虫が付いていても、外へ逃げ出す前に工場内で処理してしまう」
という仕組みになっている。
ところがスーパーで普通に販売するとなると、この方法は使えない。
買ったジャガイモは全国の家庭へ運ばれ、皮や土が外へ捨てられる可能性もあれば、家庭菜園などに植えられる可能性もある。
そのため、一般販売するには加工用よりも厳密に「そもそも病害虫が付いたジャガイモを日本へ入れない」仕組みが必要になる。
なぜ生のジャガイモをそこまで警戒する?
ここで問題になっているのは、ジャガイモを食べた人の健康ではない。
日本の農地へ新しい病害虫を持ち込んでしまうことが問題だ。
ジャガイモは種をまくだけでなく、「種いも」と呼ばれるジャガイモそのものを土に植えて栽培できる。
つまりスーパーで売られる食用ジャガイモであっても、その気になれば畑に植えられる。
さらにジャガイモには、表面だけでなく内部や付着した土などを通じて病害虫が運ばれる可能性がある。
農林水産省は、米国で栽培されるジャガイモに関係する病害虫約300種を調査した。
そこから、米国で発生しており、日本では未発生などの理由で検疫上問題となり得る54種を選び、さらに詳しくリスクを評価した。
その結果、33種については通常の検査などで対応できると判断された一方、21種については目視検査だけではなく、追加のリスク管理措置が必要になる可能性があるとされた。
対象にはコロラドハムシ、ジャガイモシストセンチュウ類、細菌、ウイルス、ウイロイドなどが含まれている。
一度農地へ入り込むと、長期間土壌に残ったり、別の植物や昆虫を通じて広がったりするものもある。
だから「人間が食べても大丈夫なら輸入していい」という単純な話ではない。
ポテトチップス用なら、なぜ大丈夫なの?
現在輸入されているポテトチップス用ジャガイモには、一般の商品にはない特殊な管理が行われている。
まず、特定のジャガイモシストセンチュウが発生していない地域などで生産する。
収穫後は土を除去し、米国側でも検査を行う。
日本への輸送には密閉型コンテナを使い、日本へ到着してからも密閉状態を保ったまま加工施設へ運ぶ。
加工施設も自由に選べるわけではなく、港の周辺にある指定施設などが使われる。
そこでジャガイモは薄く切られ、130度以上の油に2分以上浸す。
農林水産省の資料では、輸入から加工までジャガイモが一度も施設外へ開放されない「閉鎖空間」で管理される仕組みになっている。
だから加工用は輸入できても、そのまま全国へ配送される一般流通用には同じ仕組みを適用できない。
ここが今回の問題の核心だ。
解禁されたら、すぐ米国産ジャガイモがスーパーに並ぶ?
まだそう決まったわけではない。
現在は、日本側が問題になる可能性があると判断した21種の病害虫について、どんな条件なら侵入リスクを十分に抑えられるのかを米国側と協議する段階に入っている。
たとえば、特定の病害虫が存在しない地域だけを輸出地域にする方法や、栽培地での調査、輸出前の詳しい検査などが考えられる。
そのうえで日本側は、米国が実際にその対策を実施できる体制になっているかも確認する。
さらに国内で専門家や関係者から意見を聞き、必要な制度改正やパブリックコメントなどの手続きもある。
共同通信が報じた「早ければ1年程度」というのも、米国側が必要な対策を迅速に整えた場合の可能性であり、1年後の輸入解禁が確定したという意味ではない。
国内の生産者からは、病害虫が本当に防げるのかという懸念も出ている。
今後の最大の焦点は、安いか高いかよりも、一般家庭まで自由に流通させても病害虫を日本の農地へ持ち込まないと判断できる検疫条件を作れるかという点になる。