米軍基地の建物など数百棟が損傷 イラン戦争で弾薬不足も、米国防総省が初の正式報告

何が起きた?
米国防総省の監察総監は2026年9月14日、米国とイランの戦争「Operation Epic Fury(オペレーション・エピック・フューリー)」について、初めてとなる正式な監察報告書を公表した。
報告書によると、イランによる攻撃で、クウェート、バーレーン、カタール、UAE、サウジアラビア、イラク、オマーン、ヨルダンにある米軍基地の建物や構造物数百棟が損傷または破壊された。
さらに国防総省は、大量の弾薬を使用した結果、「戦略的な在庫不足」が発生したことも認めた。これは「米軍の弾薬が全部なくなった」という意味ではないが、重要な弾薬の備蓄が減り、補充にも時間がかかる状況が生じているということである。
6月29日時点での作戦費用は約334億ドルと推計されている。このうち約223億ドルが使用した弾薬、約37億ドルが失った装備の交換費用であり、破壊された基地などの修理費は含まれていない。
航空機にも大きな損害が出た。F-15E戦闘機4機が失われ、F-35A戦闘機1機が損傷、KC-135空中給油機は7機が損傷または失われた。無人機MQ-9も最大30機が失われたとしている。
ただし、これらすべてをイランが撃破したわけではない。F-15Eの4機のうち3機は友軍による誤射であり、KC-135にも衝突事故による損失が含まれている。
簡単にいうと
米軍が「弾切れになった」と考えると少し違う。
巨大な倉庫に何種類もの商品が置かれていて、そのうち特に重要な商品を猛烈な勢いで使ったため、一部の棚が薄くなり、工場からの補充も追いつかなくなっている状態に近い。
国防総省は、弾薬補充を増やそうとしているものの、固体ロケットモーター、高性能爆薬、推進剤、熟練した製造人員などが生産上のボトルネックになっていると説明している。
しかも生産能力を増やすには「かなりの時間」が必要だとしている。
イランとその代理勢力は大量のミサイルやドローンを使用した。報告書によると、中東の米軍と同盟国・友好国による統合防空網は、6000機を超える一方向攻撃型ドローンと、1500発を超える弾道ミサイルを迎撃している。
つまり、米軍は攻撃を防ぐことにはかなり成功した一方、そのために大量の迎撃兵器やその他の弾薬を消費することになったのである。
それで何が変わる?
最大の問題は、壊れた建物そのものよりも、米軍が中東で戦う方法まで変えざるを得なくなったことである。
バーレーンは、ペルシャ湾で活動する米海軍にとって重要な補給拠点だった。しかしイランによるドローンや弾道ミサイル攻撃を受けたため、米軍は補給機能の一部を別の場所へ移した。
その一つがインド洋にあるディエゴガルシア島である。
ところが距離が遠いため、海上輸送による補給には14~18日の周期が必要になった。近くの港から素早く燃料や弾薬、部品を届ける従来の仕組みより、かなり不便である。
医療体制にも影響が出た。米陸軍はイラクとクウェートから医療搬送ヘリを移動させ、負傷者については現地の医療施設へ陸路で搬送するケースが増えている。
さらに報告書では、太平洋に展開していた少なくとも6隻の米軍艦艇が中東へ振り向けられたとしている。
これは日本にも無関係ではない。
ただちに「日本周辺の米軍が弱くなった」と断定できるものではないが、中東で長期戦が続けば、米軍は弾薬、艦艇、航空機、人員を世界各地から配分し直さなければならない。インド太平洋地域にどれだけ戦力を残せるかという問題にもつながる。
なぜ米軍でもこれほど消耗した?
米国は世界最大規模の軍事力を持っているが、だからといって基地が攻撃されないわけではない。
今回の戦争では、イラン側が弾道ミサイルや大量のドローンを使い、中東各地に分散している米軍基地や補給拠点を繰り返し攻撃した。
米軍にとって厄介なのは、航空機や艦艇だけでなく、滑走路、格納庫、燃料施設、倉庫、通信設備、港なども守らなければならないことである。
固定された基地は場所が分かっているため、多数のミサイルやドローンを撃ち込まれると完全に守ることは難しい。
一方で、「イランが米軍を軍事的に圧倒した」という意味でもない。
報告書によると、米中央軍は主要な戦闘期間だけで約3万6000回の戦闘出撃を行い、約1万3500の標的を攻撃したとしている。
つまり今回明らかになったのは、
米軍には圧倒的な攻撃能力がある一方、大量のミサイルやドローンを使った長期的な消耗戦では、米軍側の基地・補給網・弾薬在庫にも大きな負担がかかる
という現実である。
まだ分からないことは?
今回の数字を「現在の米軍の最終被害」と考えてはいけない。
報告書の中心となる対象期間は2026年4月1日から6月30日までであり、2月28日の開戦以降の損失なども一部含まれている。その後に発生した戦闘の情報も一部追記されているが、9月現在までの被害を完全に集計したものではない。
さらに、米軍基地の建物などが数百棟損傷・破壊されたものの、軍事施設そのものの修復費用は今回の334億ドルに含まれていない。
どの基地を再建するのか、どこまで米国が費用を負担するのかも確定していないためである。
弾薬についても、報告書は「戦略的な在庫不足」が生じたとは認めているが、どの種類の弾薬が何発残っているのかまでは公表していない。
また、戦争そのものも終わっていない。
9月15日時点でもホルムズ海峡周辺では緊張が続いており、Reutersによると、戦争前には1日約125隻の大型商船が通過していたホルムズ海峡を、9月14日に通過した商品輸送船は4隻にまで減った。
今回の報告書の重要な点は、単に「米軍基地が壊された」ということではない。
中東での長期戦によって、米軍の基地、防空、弾薬生産、補給網まで大きな負担を受けていることを、米政府自身が初めて包括的に認めたことにある。
情報源
- 米国防総省監察総監「Operation Epic Fury, Report to Congress, April 1, 2026–June 30, 2026」
- 米国防総省監察総監「Operation Epic Fury (OEF)」
- AP「US watchdog tallies Iran war’s hit to weapons stockpiles, military bases and more」
- CNN「米国防総省、イラン戦争で軍施設数百棟の損傷や弾薬備蓄の枯渇を公表 初の正式報告書」
- Reuters「Hormuz traffic dwindles after Middle East attacks intensify」