円安で貯金は目減りする? 給料が増えない人ほど負担を感じやすい理由

何が起きた?
円安が再び進んでいます。2026年8月28日の外国為替市場では、円は一時1ドル=160.15円まで下落しました。
日本政府も急激な円安を抑えるため、7月30日から8月26日までに15兆3,993億円の為替介入を実施しました。政府がドルなどの外貨を売り、円を買うことで円安にブレーキをかける「円買い介入」です。財務省によると、この期間の介入額は15兆3,993億円でした。
ニュースでは「円安で輸出企業が得をする」とよく言われます。
しかし、円で給料を受け取り、円で貯金している家庭にとって、もっと身近な問題があります。
同じ金額の円で買えるものが少なくなる可能性があることです。
簡単にいうと
円安とは、ドルなどの外国通貨と比べて、円の価値が下がることです。
たとえば100万円を持っているとします。
1ドル=140円なら約7,143ドルに交換できます。
ところが1ドル=160円になると、約6,250ドルです。
銀行口座にはどちらも「100万円」と表示されています。
しかし、海外の商品やサービスを買う力は約12.5%低下しています。
たとえるなら、同じ100枚の商品券を持っていても、商品1個を買うのに以前より多くの商品券が必要になるようなものです。
ただし、ここで重要なのは、円安になったから日本国内で100万円の価値まで一気に12.5%下がるわけではないことです。
国内での買う力は、円安が輸入価格や物価にどこまで波及するかによって変わります。
それで何が変わる?
「外国の商品を買わなければ関係ない」とも限りません。
日本は原油や天然ガス、食料、飼料、原材料など、多くのものを海外から輸入しています。
外国で100ドルの商品が同じ価格のままでも、
1ドル=140円 → 1万4,000円
だったものが、
1ドル=160円 → 1万6,000円
になります。
日本銀行の輸入物価指数でも、外貨建て商品の円価格には為替相場の変動が反映されます。外貨での価格が変わらなくても、円安になれば円換算価格は上昇します。
この輸入コストの上昇が企業の販売価格へ転嫁されれば、食品、ガソリン、電気、衣類、家電などの値上がりにつながる可能性があります。
2026年7月の全国消費者物価指数は、前年同月比で1.9%上昇しました。
ただし、この物価上昇のすべてが円安によるものではありません。原材料価格、エネルギー価格、賃金など、さまざまな要因が物価を動かします。
重要なのは、
給料や貯金の数字が同じでも、物価が上がれば買えるものは減る
ということです。
貯金100万円は本当に減っている?
ここは、「何に対する価値なのか」を分けて考える必要があります。
円安になっても、銀行に100万円預けていれば、通帳の数字が90万円になるわけではありません。
名目上の貯金額は100万円のままです。
一方、ドルなどの外貨に交換したときの価値は低下します。
さらに円安が輸入価格の上昇を通じて国内物価にも波及すれば、日本国内でも100万円で買える商品の量が減ります。
つまり、
通帳の数字は減らない
一方で、
そのお金の購買力は下がる可能性がある
ということです。
これが「貯金が実質的に目減りする」と言われる理由です。
給料も同じです。
たとえば月給30万円が変わらなくても、毎月25万円だった生活費が27万円になれば、自由に使えるお金は5万円から3万円へ減ります。
この場合、給料そのものは減っていませんが、給料の実質的な購買力は低下しています。
ただし、国内の商品すべてが円安と同じ割合で値上がりするわけではありません。
外貨に対する円の価値の低下と、日本国内の物価上昇は分けて考える必要があります。
では、誰が得しやすい?
円安は、外国からお金を受け取る人や企業には有利に働く場合があります。
代表的なのが、海外で商品を販売している日本企業です。
海外で100万ドルの利益を得た場合、
1ドル=140円なら1億4,000万円、
1ドル=160円なら1億6,000万円です。
同じドル建て利益でも、円換算した金額は大きくなります。
訪日外国人を相手にする観光業にも追い風になる場合があります。外国人から見ると、日本の商品やサービスが自国通貨ベースで割安になるためです。
ドル預金や米国株など外貨建て資産を持っている人も、円換算した資産額は増えやすくなります。
つまり円安は、
外貨を稼ぐ人・外貨資産を持つ人には有利に働きやすい
一方、
円で収入を得て、輸入品を含む商品やサービスを買う人には負担が増えやすい
という面があります。
もちろん、輸出企業の利益増加が給料やボーナス、株価などを通じて家計へ還元される可能性もあります。
そのため「円安=全員が損」とも言えません。
ただ、収入が増えない一方で生活費だけが上昇する家庭では、円安による物価上昇の影響をより強く感じやすくなります。
通帳の「100万円」や給与明細の「30万円」という数字だけではなく、
そのお金で実際に何をどれだけ買えるのか
を見ることが大切です。