AIを使うと頭も目も疲れる? 利用者の7割が負担を感じた「AI疲れ」の正体

AIを使うと頭も目も疲れる? 利用者の7割が負担を感じた「AI疲れ」の正体
AIを使うと頭も目も疲れる? 利用者の7割が負担を感じた「AI疲れ」の正体

何が起きた?

2026年10月22日、IT企業のサーバーワークスが、AIを業務で利用する人の72.5%が疲れや負担を感じているという調査結果を発表した。

特に注目されるのは、AIを使いこなせていると回答した人ほど、疲れや負担を感じる割合が高かったことである。

調査は、勤務先にAIツールが導入されている会社員269人を対象に、2026年8月21~22日に実施された。AIを使いこなせていると感じる人の83.0%が疲れや負担を経験しており、使いこなせていないと感じる人の50.6%を大きく上回った。

こうした「AI疲れ」は日本だけの問題ではない。米国では「AI Brain Fry(AIによる脳の疲弊)」と呼ばれる現象が研究され、英国でもAIの進化についていくことへの負担が報告されている。

さらに2026年には、AI疲れを専門的に測定するための学術研究も発表された。

簡単にいうと

AI疲れとは、AIを利用する過程で生じる頭や身体の疲れ、精神的な負担などを指す言葉である。

例えば、AIに文章を作成してもらう場合、人間が文章を一から書く必要はなくなる。

しかし、AIに適切な指示を出し、返ってきた文章を読み、間違いがないか確認し、必要に応じて修正させる作業は残る。

AIが何度でも回答を作り直してくれるため、納得するまで修正を繰り返し、気づけば長時間作業していたということも起こり得る。

つまり、AIは人間の仕事を減らしてくれる一方で、新しい種類の仕事を増やす場合もあるのだ。

しかも、AI疲れには頭を使うことによる疲れだけでなく、目の疲れや首・肩のこりといった身体的な問題も関係している可能性がある。

なぜAIを使いこなす人ほど疲れるのか?

サーバーワークスの調査では、AI利用に疲れや負担を感じると回答した195人に、その原因を尋ねている。

最も多かったのは「希望する回答を得るまで指示を繰り返すこと」の36.9%だった。

続いて「AIの出力を判断・確認・修正すること」が36.4%、「情報漏えいや著作権などを意識し続けること」と「仕事のスピードや業務量が増えること」がそれぞれ29.2%となった。

ここから見えてくるのは、AIに仕事を任せても、最終的な判断や責任は人間に残るという問題である。

例えば、AIが大量の資料を数分で分析しても、人間はその結果が正しいかを確認しなければならない。AIが仕事を高速化するほど、確認すべき情報が次々と増える可能性もある。

NTTドコモのモバイル社会研究所が2026年9月に公表した調査でも、全国の生成AI利用者3,669人のうち19.5%が、AIの回答を確認したり、適切なものを選んだりする作業に負担を感じていた。

特に、AIの回答を常に事実確認する人では28.2%が負担を感じていたのに対し、全く事実確認しない人では13.0%だった。

ただし、AI疲れを感じる人が必ず多数派というわけではない。

サーバーワークスの72.5%は、AI導入企業の会社員に幅広い疲れや負担を尋ねた結果である。一方、NTTドコモの19.5%は、一般の生成AI利用者に情報の確認・選択という特定の負担を尋ねた結果である。

また、AIを使いこなすこと自体が疲労の原因なのか、それとも利用頻度や仕事内容が関係しているのかは、これらの調査だけでは判断できない。

海外でも「AI疲れ」は研究されている?

米国では2026年3月、経営コンサルティング会社BCGの研究者らが、AIの過剰な利用や監督によって生じる精神的疲労を「AI Brain Fry」と名付け、Harvard Business Reviewで研究結果を発表した。

米国の大企業で働く1,488人を対象とした調査では、AI利用者の14%がこのような疲労を経験したと回答した。

研究では、頭にもやがかかったような感覚、集中力の低下、判断の遅れ、頭痛などが報告されている。

AIの回答を大量に確認したり、複数のAIツールを同時に監督したりすることで、人間の情報処理能力に負担がかかるという問題である。

英国のHenley Business Schoolが2026年に実施した調査でも、29業種の労働者2,900人のうち61%が、AIの進化の速さに圧倒されていると回答した。

ただし、英国の数字はAI利用中の身体的・精神的疲労ではなく、技術の変化についていくことへの負担を示している。

さらに2026年8月、学術誌『Computers in Human Behavior Reports』に、AI疲れを測定するための研究が掲載された。

合計717人が参加した4つの研究を通じて、研究者らはAI疲れを次の4つに分類した。

  • 認知的疲労:情報の処理や判断によって頭が疲れること
  • 感情的疲労:AIとのやり取りでいら立ちや精神的な消耗を感じること
  • 身体的疲労:AIとの長時間のやり取りに伴って身体が疲れること
  • 行動的な離脱:AIの利用を避けたり、減らしたくなったりすること

この研究では、AI疲れが強い人ほど、現在のAI利用が少なく、今後の利用を減らそうとする傾向も確認された。

AI疲れは単なる流行語ではなく、専門的な研究対象になり始めているのである。

目の疲れや頭痛もAIが原因なのか?

AI疲れで見逃せないのが、身体への負担である。

2026年2月、ピップ株式会社は15~39歳の男女1,000人を対象とした調査結果を発表した。

生成AIを利用している544人のうち、利用中や利用後に強く感じるようになった身体の不調として、34.6%が「目の疲れ・乾燥」、30.9%が「首のこり・はり」、28.3%が「肩のこり・はり」を挙げた。

また、生成AI利用者の60.2%が、AI普及前と比べてパソコンやスマートフォンを使う時間、または頻度が増えたと感じていた。

ただし、これらは本人の回答に基づく調査であり、AIが直接症状を引き起こしたと証明したものではない。

目の疲れについては、AI特有の問題というよりも、長時間画面を見続けることによる影響が考えられる。

米国眼科学会によると、パソコンやスマートフォンの画面を見ているときは、通常よりまばたきが減少し、目の乾燥やかすみ、頭痛などが起こる場合がある。

AIでは回答を読み、追加で質問し、再び回答を確認するという作業が続くため、結果として画面を見る時間が長くなる可能性がある。

したがって、AI利用による疲れは大きく分けると、情報の処理や判断による頭の負担と、画面を見続けることによる目や身体の負担という、異なる仕組みが重なっていると考えられる。

ただし、AIの利用そのものが脳や目に長期的な損傷を与えるという証拠が確立されたわけではない。

AI疲れを減らすには?

AI疲れを防ぐには、AIを使う時間だけでなく、人間が処理する情報量を減らすことが重要と考えられる。

例えば、AIに最初から長い説明を求めるのではなく、「結論を先に」「要点を3つだけ」「必要な部分だけ詳しく」と指示すれば、読む量を抑えられる。

また、何度も同じ修正を繰り返す場合は、AIへの指示の仕方を見直すことも有効だろう。

複数のAIを同時に動かしている場合も、すべての回答を人間が確認しきれる範囲に抑えることが望ましい。

目の負担には、20分ごとに20フィート(約6メートル)以上離れた場所を20秒間見る「20-20-20ルール」が参考になる。まばたきを意識し、画面から定期的に視線を外すことも重要である。

一方で、AIには反復作業を減らし、人間の負担を軽くする効果も期待できる。

問題はAIそのものではなく、便利になった分だけ作業や確認事項を増やしてしまう使い方にあるのかもしれない。

AIは疲れを知らずに大量の情報を処理できる。しかし、その結果を受け取る人間の集中力や判断能力には限界がある。

AIの性能が向上するほど、どれだけ多くの仕事を任せられるかだけでなく、人間がどれだけ無理なく使い続けられるかも、重要な課題になっていくと考えられる。

情報源