赤い羽根で2億5000万円が使途不明 なぜ防げなかった? 寄付を本当に必要な人へ届けるには

赤い羽根で2億5000万円が使途不明 なぜ防げなかった? 寄付を本当に必要な人へ届けるには

何が起きた?

北海道共同募金会は2026年9月16日、「赤い羽根共同募金」などに関する使途不明金が、新たに約7000万円判明したと明らかにした。これまでに判明していた約1億8000万円と合わせ、総額は約2億5000万円に膨らんだ。

これまでの約1億8000万円については、会計を担当していた元事務局長による着服が疑われている。北海道共同募金会は7月、この元事務局長を多額の使途不明金につながる経理処理などを理由に懲戒解雇した。

ただし、約2億5000万円のすべてを元事務局長が私的に使ったと確定したわけではない。新たに判明した約7000万円を含め、誰が何に使ったのかについては今後の調査が必要である。

北海道共同募金会は9月11日、弁護士と公認会計士からなる第三者委員会を設置した。元事務局長の関与だけでなく、役員や元役員に責任がなかったか、なぜ長期間発覚しなかったのかについても調べ、2027年1月末をめどに報告書をまとめる予定である。

簡単にいうと

今回の問題は、「募金箱から誰かがこっそりお金を抜いた」という単純な話ではない。

たとえば会社で、1人の社員に通帳も会計処理も支払いも長期間任せ、上司が帳簿と銀行残高を十分に確認していなかったとする。その社員が数字をごまかせば、不正が長期間見つからない可能性がある。

北海道共同募金会が札幌市に提出した改善報告書によると、長期間にわたり1人の職員に経理や会計事務を単独で担わせ、必要な決裁手続きや公印管理も適切に行われていなかった。札幌市は、内部の牽制・監督機能が働いていなかったことを重大な原因と指摘している。

しかも、この問題を最初に発見したのは共同募金会自身の監査ではない。

2026年2月、元事務局長に対する所得税法違反の疑いで札幌国税局が査察し、会計資料の多くを押収した。その後に残った資料を調べたところ、共同募金会に本来あるはずの資金が不足していることが分かった。

共同募金会自身も、帳簿に通常記録されていない「簿外」の処理が多数あったと説明している。つまり、通常の会計チェックだけでは実態を把握できない状態になっていた可能性がある。

一番の問題は「1人の不正」だけではない

仮に今後、元事務局長による着服が確認されたとしても、それだけでは今回の問題を説明しきれない。

本来、組織のお金は「支払いを申請する人」「承認する人」「通帳を管理する人」などを分ける。1人が勝手にお金を動かせないようにするためで、これを内部牽制という。

北海道では、この仕組みが十分に機能していなかった。

中央共同募金会も北海道の事件を受けて、「一人の職員が単独で法人の出納業務を行い、組織として口座や預金額、取引の管理が不十分だったこと」が大きな原因とみている。

北海道共同募金会も、今回の問題について「ガバナンス意識の著しい欠如」「会計業務における牽制・監督機能の形骸化」があったと認めている。

つまり問われているのは、「悪い職員がいたのか」だけではない。

なぜ1人の職員が巨額のお金を動かせる状態を長期間放置できたのか。そして監事や理事会などは、なぜ異常を発見できなかったのか。

第三者委員会が役員や元役員の責任まで調査するのは、このためである。

全国の赤い羽根も同じなの?

北海道の問題を受け、中央共同募金会は北海道を除く46都府県の共同募金会を緊急点検した。

その結果、北海道と同じような使途不明金につながる事案は確認されなかった。46都府県すべてで帳簿上の金額と預金残高が一致し、組織が把握していない金融機関からの借り入れも確認されなかった。

ただし、「まったく問題なし」だったわけでもない。

3県では使っていない口座や会計に登録されていない口座が見つかった。また、インターネットバンキングを利用する43県のうち4県では、振込データを作る人と承認する人を分ける設定になっていなかった。

つまり、今回の調査から「赤い羽根全体で巨額の横領が行われている」と考える根拠はない。一方で、不正を起こしにくくする基本的な管理に改善の余地がある共同募金会が複数あったことも事実である。

募金のお金の管理問題は昔から指摘されていた

実は、募金をどう管理するかという問題は最近始まったものではない。

1958年、当時の厚生省は十数県の共同募金会を監査し、以前から改善を求めていたにもかかわらず「なお十分是正がなされていない」と指摘している。

当時問題になったのは、集めた募金の一部を都道府県共同募金会へ送らず、地域組織が事務費などとして差し引く「天引き」、助成先から領収書を取っていないケース、使い道を明確にしないまま資金を配るケースなどだった。

厚生省は、経理が不明確なままでは共同募金そのものへの不信を招くおそれがあるとして、都道府県に毎年検査するよう求めていた。

これは「昔から赤い羽根で横領が横行していた」という意味ではない。

ただ、善意で集めたお金だからこそ、経理を透明にして監視する必要があるという問題は、少なくとも約70年前から行政に認識されていたのである。

寄付を本当に必要な人へ届けるには?

では、「自分が出したお金を、本当に困っている人のために使ってほしい」と考える場合、どうすればいいのだろうか。

まず知っておきたいのは、赤い羽根共同募金は基本的に、寄付金を困っている個人へそのまま現金で渡す制度ではないということだ。

共同募金会が社会福祉協議会や福祉施設、NPO、地域のボランティア活動などを審査し、その活動に資金を助成する仕組みである。助成先や金額は「赤い羽根データベース はねっと」で公開されている。

そのため、寄付するときには「有名な募金だから」という理由だけでなく、最終的に誰へ、何のために、いくら使われるのかを見ることが重要になる。

災害で「被災した人へ直接お金を届けたい」という目的なら、日本赤十字社などが受け付ける「国内災害義援金」という方法がある。

日本赤十字社の国内災害義援金は、日赤の活動費や事務経費には使わず、全額を被災都道府県の義援金配分委員会へ送り、自治体を通じて被災者の生活支援に配分する仕組みになっている。

一方、子どもの貧困、ホームレス支援、障害者支援など特定の問題を助けたい場合は、寄付先の団体について、事業報告書や決算書、実際の活動実績を確認する方法がある。

NPO法人なら、内閣府のNPO法人ポータルサイトで法人情報や事業報告などを確認できる。寄付金を集めている団体が「誰を助け、何にいくら使い、その結果どうなったのか」を継続的に公開しているかは、大きな判断材料になる。

そして、「事務費が少ない団体ほど良い」と単純に考えるのも注意が必要である。

不正を防ぐには、会計担当者を分ける、監査を行う、寄付の使途を確認する、情報を公開するといった作業が必要であり、それにも費用がかかる。

今回の北海道の問題は、むしろ募金を集めるだけでなく、そのお金を守る仕組みにも十分な人員と監視が必要だということを示している。

今後、一番確認すべきことは?

最大の焦点は、約2億5000万円が具体的にどこへ消えたのかである。

現時点では使途不明であり、全額が誰かの私物や生活費に使われたと確認されたわけではない。

第三者委員会は元事務局長の具体的な関与だけでなく、役員や元役員の責任、不正を長期間発見できなかった原因まで調査する。

北海道共同募金会は、事実関係が明らかになれば、刑事告訴や損害賠償請求も含めて対応するとしている。

募金は、寄付する側から見れば数百円、数千円かもしれない。しかし、それが積み重なれば億単位のお金になる。

だからこそ必要なのは、「善意で運営されているはずだから信用する」ことではなく、善意で集めたお金だからこそ、誰でも後から確認できる仕組みにすることである。

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