中国のAIはNVIDIAなしでも動く? Huaweiが新AIチップを9カ月前倒し

中国のAIはNVIDIAなしでも動く? Huaweiが新AIチップを9カ月前倒し

何が起きた?

中国のHuaweiは2026年9月17日、次世代のAI向け半導体「Ascend 960DT」を2027年第1四半期、「Ascend 960PR」を同年第3四半期に投入する計画を明らかにした。

特に960DTは、これまで2027年第4四半期としていた計画から3四半期、約9カ月の前倒しとなる。960PRも従来計画より1四半期早まる。

Huaweiはその後も、2028年にAscend 970、2029年に980を投入し、原則として年1回のペースでAIチップを更新していく方針を示している。

背景にあるのは、米国による半導体輸出規制だ。中国企業はNVIDIAの最先端GPUや半導体製造装置を自由に調達できないため、Huaweiを中心に国産AI基盤の開発を急いでいる。

簡単にいうと

Huaweiの作戦は、「NVIDIAと同じくらい強いチップを1個作る」だけではない。多少不利なチップでも、大量につないで1台の巨大コンピューターのように動かすことである。

たとえば、一人ひとりの計算速度で勝てなくても、数千人の計算担当者を高速通信で結び、仕事を効率よく分担できれば、チーム全体では非常に大きな仕事ができる。

Huaweiはこのために「UnifiedBus」という高速接続技術や、新しい「Peerium」というコンピューター構成を開発している。

今回発表した「Ascend 960 Supernode」では、最大4,096個のAIプロセッサを高速接続する。さらに複数のSupernodeを束ね、最終的には最大100万個規模のプロセッサを一つのシステムとして動かす構想まで示している。

つまりHuaweiは、単体チップだけでNVIDIAと競うのではなく、チップ、通信、メモリ、ソフトウェアまでまとめた巨大AIシステム全体で対抗しようとしている。

なぜ大量のチップをつなぐの?

現在の巨大AIモデルでは、1個や数個のGPUだけで学習することはできない。

数千~数万個、場合によっては10万個規模のAIチップに計算を分担させる必要がある。

ところが、ここで問題になるのが「チップ同士の会話」である。

Huaweiによると、従来型の大規模サーバーでは、機械同士がデータを交換する時間だけでAI学習時間の40%以上を占める場合がある。

いくら計算能力の高いチップを並べても、互いにデータを待ってばかりでは性能を発揮できない。

そこでHuaweiは、960世代のSupernodeに「NPO」と呼ばれる光通信技術を採用した。電気信号だけではなく光を使って大量のデータをやり取りし、大量のAIチップを効率よく協調させようとしている。

Huaweiによる測定では、960 Supernodeは最大4,096枚のAIカードを接続でき、FP8で8EFLOPS、FP4で16EFLOPSの計算能力を持つとしている。

ただし、これらはHuawei自身が公表した設計値・性能値であり、NVIDIA製システムとの独立した実機比較が済んでいるわけではない。

中国のAIはNVIDIAなしでも動く?

少なくとも、「NVIDIAのGPUが手に入らなければ中国のAI開発が止まる」という状況ではなくなりつつある。

Huaweiによると、旧世代のAscend 910Cを使ったAIシステムはすでに1,000台以上導入され、Ascend 950世代も商用利用が始まっている。

2026年4月にはReutersが、DeepSeekの新しいAIモデル登場を受け、ByteDance、Alibaba、Tencentなど中国の大手IT企業がHuawei製AIチップの確保を急いでいると報じている。

つまりHuawei製AIチップは、研究用の試作品ではなく、中国国内で実際のAIサービスを支える選択肢になり始めている。

Huaweiの徐直軍・輪番会長は、中国国内の需要に生産が追いついておらず、海外販売を本格的に拡大できない状態だとも説明している。

需要がないのではなく、むしろ作れる量の方が足りないのである。

それでもNVIDIAとの差は消えていない

だからといって、「中国はもうNVIDIAを必要としない」と考えるのも早い。

Huaweiには大きく三つの弱点が残っている。

一つは、最先端半導体を作るための製造能力である。

Huaweiは設計を進められても、TSMCなど世界最先端の半導体工場を自由に利用できない。米国の規制では、先端半導体を製造する装置の中国向け供給も制限されている。

二つ目はHBM(高帯域幅メモリ)だ。

AIチップでは、計算回路だけでなく、大量のデータを高速で読み書きする特殊なメモリが非常に重要になる。

2026年9月には、中国でHBM不足が深刻化し、Huaweiを含むAIチップメーカーが価格を引き上げているとReutersが報じた。米国による先端HBMの輸出規制も、中国側の調達を難しくしている。

三つ目がソフトウェアである。

NVIDIAの最大の武器の一つは、長年普及してきた「CUDA」という開発環境だ。世界中のAIソフトウェアがCUDAを前提として作られており、単純にGPUだけ交換すれば済むわけではない。

Huaweiも独自のCANNをオープン化し、PyTorchやvLLMなど主要なAIソフトウェアとの互換性を高めている。

それでも、ハードウェアだけでなく開発者、ソフトウェア、ノウハウまで含めたNVIDIAの巨大な生態系を置き換えるには時間がかかる。

今後の焦点は?

今回のニュースで重要なのは、Huaweiが「いつかNVIDIAに追いつく」と宣言したことではない。

米国から最先端GPUを買えないなら、中国国内で別のAIインフラを作るという計画が、かなり具体的な段階まで進んできたことである。

Huaweiの戦略は、単体チップの性能差を、大量のチップを高速につなぐシステム技術で補うというものだ。

これが成功すれば、米国の輸出規制によって中国のAI開発そのものを止めることは、ますます難しくなる可能性がある。

一方で、Huawei自身が「中国国内の需要すら十分に満たせない」と認めているように、製造能力やHBM不足は依然として大きな制約だ。

2027年に960DTと960PRが予定通り量産されるのか。そして、巨大なSupernodeを実際のAI学習でどれだけ効率よく動かせるのか。

「Huaweiのチップ1個がNVIDIAを超えたか」ではなく、「中国がNVIDIAなしでも巨大AIを作れる仕組みを完成させられるか」が、今後の焦点になりそうだ。

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