日本のゲーム開発者85.8%が生成AIを利用 ただし「85%がAI絵を使う」わけではない

何が起きた?
日本のゲーム業界で、生成AIの利用がかなり広がっていることが分かった。
コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が2026年9月17日に発表した調査では、ゲーム開発者など1,349人のうち、63.0%が生成AIを「日常的に利用している」、22.8%が「時々利用している」と回答した。
合わせると85.8%になる。
調査は2026年5~8月にインターネットで行われ、プロデューサー、ディレクター、エンジニア、アーティスト、ゲームデザイナー、サウンドクリエイター、テスター、管理職など、商業ゲーム開発に携わる人を主な対象としている。一部、教育関係者や学生の回答も含まれる。
CESAは、ゲーム開発の現場で生成AIが一部の先進的な人だけが使うものではなく、広く定着しつつあるとしている。
簡単にいうと
ここでいう「生成AIを使っている」は、AIにゲームの絵を描かせて、その画像を製品に使っているという意味ではない。
調査で生成AIとして扱われているのは、ChatGPTやGitHub Copilot、画像生成サービス、アセット生成サービスなど幅広いツールだ。
たとえば開発者が、
「このプログラムのエラー原因を教えて」とAIに聞く。
企画書の文章を整理してもらう。
アイデア出しを手伝ってもらう。
翻訳する。
画像を試作する。
こうした使い方もすべて「生成AIの利用」に入る。
つまり今回分かったのは、ゲームそのものをAIが作っているというより、ゲームを作る人の仕事道具としてAIが急速に入り込んでいるということだ。
「85%がAI絵を使っている」ではない
今回の85.8%という数字だけを見て、「日本のゲームの85%でAI画像が使われている」と受け取るのは間違いである。
今回CESAが公開した資料には、1,349人が生成AIを具体的に何の業務へ使ったのかという詳細な内訳は掲載されていない。
そのため、
- 画像生成に使った人が何%か
- プログラミングに使った人が何%か
- ストーリーや文章作成に使った人が何%か
- 実際にゲームへAI生成物を採用した人が何%か
までは、この85.8%からは分からない。
さらに、「ChatGPTを仕事の調べものに使った」だけでも生成AI利用者になる可能性がある。
生成AIを使ったことと、生成AIが作った素材を完成したゲームへ入れることは別の話なのである。
「昨年51%から85%へ急増」も注意が必要
今回のニュースでは、「2025年の約51%から2026年は85.8%に急増した」と紹介されることがある。
しかし、この2つの数字はそのまま比較できない。
2025年に報じられた51%は、CESA会員企業を対象にした調査で、回答した54社のうち約51%がゲーム開発に生成AIを利用しているという企業単位の数字だった。
一方、2026年の85.8%は、1,349人の開発者など個人への調査である。
簡単にいえば、
2025年は「あなたの会社はAIを使っていますか?」
2026年は「あなた自身は仕事でAIを使っていますか?」
に近い違いがある。
しかもCESAは、今回の「ゲーム開発者の就業とキャリア形成」と「CESA会員企業調査」で、生成AIの活用状況を調べたのは初めてだとしている。
したがって、「同じ調査で51%から85.8%へ34.8ポイント増えた」と考えるのは正確ではない。
ただし、ゲーム開発現場で生成AIがかなり一般的な道具になってきている、という傾向そのものは今回の結果から読み取れる。
ゲーム会社はAIに何を期待している?
CESAは開発者とは別に、会員企業にも生成AIについて調査している。
220社を対象に調査し、この質問には48社が回答した。
生成AIに期待する効果として最も多かったのは、「業務効率化・生産性向上」の38社だった。
続いて、
開発期間の短縮が30社、開発・運営コストの削減が29社、多言語対応・海外展開の促進が24社、新しい表現やアイデアの創出が22社となっている。
つまり企業側がまず期待しているのも、「AIに絵を描かせること」そのものではない。
人間が行ってきたゲーム制作のさまざまな作業を速くすることが中心となっている。
海外のゲーム業界でも似た傾向がある。GDCが2026年に2,300人以上のゲーム業界関係者を調べたところ、生成AI利用者の用途で最も多かったのは「調査・ブレインストーミング」だった。メールなどの日常業務やプログラミング支援も多い。
生成AIというと画像生成が目立ちやすいが、実際の仕事では文章、検索、コード、企画など、表からは見えない部分で使われているケースが多い。
AIを使っても「そのまま採用」とは限らない
もう一つ重要なのが、ゲーム会社側の管理である。
CESAによると、生成AIを利用する企業で最も多かった取り組みは、AIが出したものを人間が確認・修正・監修することだった。
利用できるAIツールを会社側が指定・制限したり、AIの出力をそのまま成果物として使わない運用も多いという。
背景には著作権や知的財産権の問題がある。
AIが作った画像や文章をそのまま商品に入れるのと、プログラマーがコードを書く際の相談相手としてAIを使うのでは、権利上のリスクも大きく異なる。
そのため現在のゲーム業界では、「AIを使うか、使わないか」という段階から、「どこまで使い、最後に誰が責任を持つのか」という段階へ移りつつあると見る方が実態に近い。
今回の85.8%という数字が示しているのも、ゲームがAI製になったということではない。
ゲームを作る人のすぐ横に、ChatGPTやCopilotなどのAIがいることが珍しくなくなった。
そう考えると、この数字の意味が見えやすい。