NHKが戸別訪問を再開 2023年にやめたはずの「受信契約営業」がなぜ復活?

何が起きた?
NHKが、新たに受信契約を結んでもらうための戸別訪問営業を一部地域で再開したことが、2026年9月21日に明らかになった。
外部法人に訪問を委託する方式で、東京、大阪、名古屋などの都市部で試行している。全国一斉に以前の訪問営業へ戻すわけではない。
また、かつて問題になった「突然家にやって来る」という方式への批判を踏まえ、今回は事前に書面で知らせてから訪問するなど、相手の理解を得ながら進めるとしている。
しかしNHKは、2023年9月までに外部法人による受信契約の巡回型訪問営業を廃止していた。
なぜ、わずか3年ほどで戸別訪問を復活させることになったのだろうか。
簡単にいうと
NHKは以前、
「人が何度も家を回る営業は、お金がかかるうえに苦情も多い」
という問題を抱えていた。
そこで戸別訪問への依存を減らし、郵便やインターネットなどを使って、自分から契約してもらう方式へ切り替えた。
この改革には効果もあった。営業経費は減り、訪問をめぐる苦情も大幅に減少した。
ところがその一方で、受信料収入や契約数は減少している。
つまりNHKは、
「訪問営業を減らせば経費や苦情は減る。しかし、対面で契約や支払いを求める機会まで減ってしまう」
という難しい問題に直面している。
今回の再開は、昔の営業方式に完全に戻るというより、郵便やネットだけでは届きにくい人に対して、対面営業をもう一度組み合わせてみる試みと考えた方が正確だ。
なぜ2023年に戸別訪問をやめた?
NHKが問題視していたのは「巡回型」と呼ばれる営業だった。
訪問員が地域を回り、未契約者などの家を繰り返し訪問する方式である。
NHKは2023年の国会で、この方式には営業経費が高止まりすることや、訪問員に対するクレームが多いことなどの問題があったと説明している。
訪問中心の営業を減らした結果、当時、苦情件数はコロナ禍前の10分の1以下まで減ったという。
経費削減の効果も大きかった。
NHKは2026年3月の国会で、巡回型訪問営業から新しい営業方式へ転換したことなどにより、6年間で約190億円の営業経費を削減したと説明している。
つまり、2023年の方針転換そのものが完全な失敗だったわけではない。
むしろ「お金がかかる」「訪問が嫌だという苦情が多い」という問題については、かなり改善していた。
それでも復活させるのはなぜ?
大きな背景にあるのが、NHKの受信料収入の減少だ。
2025年度の受信料収入は5851億円で、前年度より50億円減った。減少は7年連続となった。
NHK全体の事業収支も318億円の赤字で、3年連続の赤字だった。
受信契約数も減っている。
2025年度末には約4347万件だった契約数が、2026年7月末には約4335万件となっている。
さらにNHKは、訪問営業を減らして対面で接触する機会が少なくなったことなどから、契約しているのに長期間受信料を払っていない世帯や事業所が増えたとも説明している。
2019年度と比べると、長期未払いは約2.5倍になったという。
そこでNHKとしては、ネットや郵便だけに頼るのではなく、必要なところでは再び人が直接説明する方法も使う必要がある、と考えたわけだ。
「訪問営業をやめたから赤字になった」わけではない
ただし、
戸別訪問を廃止した → 受信料収入が減った → 赤字になった → 慌てて復活した
と単純に考えるのも正確ではない。
NHKは2023年10月に受信料を約1割値下げしている。
地上契約の場合、口座振替・クレジットカード払いの月額は1225円から1100円に、衛星契約は2170円から1950円になった。
そのため、現在の受信料収入の減少には、NHK自身が料金を下げた影響も含まれている。
さらに契約数そのものも減少している。
NHKの収入減は、訪問営業の廃止だけで説明できるものではない。
一方でNHK自身が、対面で接触する機会が減ったことによる問題を認めているため、今回、一部で訪問営業を戻す判断につながったと考えられる。
昔と同じ「突然ピンポン」が戻ってくる?
少なくとも現時点では、昔と同じ形に全面的に戻す計画ではない。
今回の外部法人による訪問営業は試行段階で、NHKは事前に書面を送るなどしたうえで訪問すると説明している。
成果に応じた報酬制度もあるが、以前より報酬額は小さく設定されているという。
また、現在実施しているのは東京、大阪、名古屋などの一部地域で、全国展開するかどうかもまだ決まっていない。
NHK内部にも「以前の規模に戻すのは難しい」との見方があると報じられている。
なお、2025年度末の推計世帯支払率は全国で76.9%だった。
東京は65.6%、大阪は63.9%と全国平均を大きく下回っている。ただし、NHKがこれを理由として東京や大阪を訪問営業の対象に選んだと公式に説明しているわけではない。
今回のポイントは、2023年に廃止した営業方式をそのまま復活させたのではなく、「訪問を減らすことで得られた経費削減や苦情減少を維持しながら、対面営業の効果だけを取り戻せるか」を試しているということだ。
今後、訪問地域が全国へ広がるのか、それとも限定的な試みに終わるのかが焦点となる。