「ドパガキ」が拡散 子どもはショート動画で“ドーパミン中毒”になるのか?

「ドパガキ」が拡散 子どもはショート動画で“ドーパミン中毒”になるのか?

何が起きた?

TikTokやYouTube Shortsなどの短い動画を延々と見続ける人を指して、「ドパガキ」という言葉がSNSなどで広がっています。

「ドーパミン中毒のガキ」を縮めたネットスラングで、刺激の強いコンテンツを次々に求め、スクロールを止められない状態をからかったり、自虐的に表現したりする言葉です。

2026年6月に「女子高生ラボ」が現役女子高生60人を対象に行った調査でも、流行語の一つとして「ドパガキ」が挙げられました。その後テレビなどでも取り上げられ、9月23日には弁護士ドットコムニュースがスマホにのめり込む子どもをめぐる特集を掲載するなど、若者の内輪の言葉から一般にも知られる言葉になりつつあります。

ただし、「ドパガキ」は医学用語ではありません。

そして、ショート動画を見るとドーパミン中毒になり、脳が壊れるという単純な説明も、現在の科学では正確とはいえません。

簡単にいうと

問題になっているのは「ドーパミンが出ること」そのものではなく、短く刺激の強い動画を、終わりなく次々と見られる仕組みです。

普通のテレビ番組なら30分や1時間で終わります。本なら章が終われば、そこで一度読むのをやめるきっかけがあります。

ところがショート動画は、指を1回動かすだけで次の動画が始まります。

しかも、次に何が出てくるか分かりません。

面白い動画かもしれないし、興味のない動画かもしれない。さらにサービス側は視聴履歴などから利用者の好みを学習し、興味を持ちそうな動画を次々と推薦します。

つまり、

「もう1本だけ」を繰り返しやすく、自然な終わりがない。

ここが従来の動画との大きな違いです。

米国小児科学会(AAP)も2026年の方針で、無限スクロールや自動再生について、子どもがデジタル機器から離れることを難しくし、利用時間を長くする可能性があると指摘しています。

本当に「ドーパミン中毒」なの?

ここは「ドパガキ」という言葉から受ける印象と、科学的な説明を分ける必要があります。

ドーパミンは単純な「快楽物質」ではありません。

脳が「予想していた結果と実際の結果はどう違ったか」を学習したり、何かを求めて行動したり、次に何をするか決めたりするときにも関係する神経伝達物質です。

そのため、

「ショート動画を見る」

「大量のドーパミンが出る」

「ドーパミン中毒になる」

「普通のことでは満足できなくなる」

という説明だけで人間の行動を説明するのは単純化しすぎです。

ショート動画には人を繰り返し見させる特徴がありますが、それをそのまま「ドーパミンという物質への中毒」と考えるのは正確ではありません。

いわゆる「ドーパミン断ち」をすれば脳内のドーパミンがリセットされる、という考え方にも注意が必要です。

問題を見るなら、ドーパミンの量そのものより、「やめたいのにやめられない行動が続いているか」を見るほうが現実に近いでしょう。

ショート動画で集中力が落ちるという研究はある?

一方で、「だからショート動画には何の問題もない」というわけでもありません。

2025年に発表されたタイの研究では、6~12歳の子ども528人を調べたところ、ショート動画を見る時間が長い子ほど、不注意に関する行動が多いという関連が確認されました。

総スクリーン時間や家庭環境などを考慮した後でも関連が残り、特に年齢の低い子どもで強くみられました。

ただし、この研究から、

「ショート動画を見たから集中力が低下した」

とまでは言えません。

もともと集中を続けることが苦手な子どもほど、次々に内容が変わるショート動画を好む可能性もあるからです。

2026年6月に発表された別のシステマティックレビューでは、若者を対象とした42研究を分析し、ショート動画の大量・問題的利用と、不注意、衝動性、ワーキングメモリー、自制などとの関連を報告しています。

しかし、対象研究の88%は一時点だけを調べた研究で、研究者による証拠の評価も「低い」または「非常に低い」確実性にとどまりました。

つまり現在分かっているのは、

「ショート動画を大量に見る人ほど注意や自制に問題がみられる傾向はある。しかし、ショート動画が原因だと断定するには証拠がまだ足りない」

というところです。

「ショート動画で子どもの脳が壊れる」とまで言うのは、現時点では行き過ぎです。

子どもだけの問題なの?

「ドパガキ」という名前から子どもの問題のように見えますが、ショート動画を止められなくなる仕組みは大人にも当てはまります。

しかも、子どもにとって動画を見ること自体は、すでに珍しい行動ではありません。

こども家庭庁の2025年度調査では、インターネットを利用している0~9歳の子どものうち、93.4%が動画を視聴していました。

つまり現実的には、「動画を見せるか、見せないか」という二択ではなくなっています。

重要なのは、動画を見ることそのものより、

  • 寝る時間を削ってまで見ている
  • 宿題や学校生活に影響している
  • やめようとしてもやめられない
  • 他の遊びや活動をほとんどしなくなった
  • スマホを取り上げると生活に大きな支障が出るほど強く反応する

といった状態になっていないかです。

単純に「1日何時間見たらアウト」と考えるより、スマホや動画が生活のほかの部分を押しのけ始めているかを見る必要があります。

問題は「子どもの我慢不足」だけではない

今回の話で見落としやすいのが、サービスそのものの設計です。

ショート動画では、自動再生、無限スクロール、個人に合わせたおすすめなど、「次も見たくなる」「やめるきっかけがなくなる」仕組みが組み合わされています。

米国小児科学会も、こうした仕組みを家族だけの自己責任として扱うべきではないという考えを示しています。

対策も「子どもからスマホを取り上げる」だけではありません。

自動再生を切る、寝るときにはスマホを別の場所に置く、食事や宿題中には使わない、見る時間の終わりをあらかじめ決めるなど、「意思の力だけで止める」のではなく、止めやすい環境に変える方法があります。

「ドパガキ」という言葉は刺激的ですが、その言葉だけで子どもを「中毒」と決めつけるのも適切ではありません。

一方で、ショート動画には従来のメディアとは違う「終わりにくさ」があり、問題的な利用と注意力や自制との関連を示す研究も増えています。

今考えるべきなのは「ドーパミンが悪いのか」ではなく、子どもが自分で止めることの難しいサービスを、日常生活の中でどう使わせるのかという問題でしょう。

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