プルデンシャル生命、支社長らの歩合制を廃止へ 30.8億円の金銭問題で報酬制度を見直し

プルデンシャル生命、支社長らの歩合制を廃止へ 30.8億円の金銭問題で報酬制度を見直し

何が起きた?

プルデンシャル生命保険が、支社長や営業所長に採用してきた「フルコミッション」と呼ばれる、業績に強く連動した報酬制度を廃止し、固定給を導入する方針を決めたことが9月18日に分かった。

毎日新聞によると、同日の社内会議で幹部が方針を説明した。一般の営業社員についても、最低月35万円程度の報酬を設ける方向だという。

背景にあるのが、社員や元社員による大規模な金銭トラブルである。

プルデンシャル生命自身も、不祥事の原因の一つとして「業績に過度に連動する報酬制度」を挙げており、営業成績だけを強く追う仕組みそのものを変えようとしている。

簡単にいうと

これまでのプルデンシャル生命は、営業で大きな成果を出せば、報酬も大きく増える仕組みを特徴としてきた。

たとえるなら、店員だけでなく店長まで「今月いくら売ったか」で給料が大きく変わる店に近い。

成果を上げた人に多く払うこと自体が悪いわけではない。しかし、収入が不安定になるほど歩合の比重が高く、さらに営業社員を監督する上司の報酬まで販売実績に左右されると、「売ること」と「問題がないか監視すること」のバランスが崩れるおそれがある。

今回の改革は、そこに固定給を入れ、売り上げだけでなく契約後の対応やコンプライアンスも評価しようというものだ。

どんな不正が起きていた?

問題が大きく表面化したのは2026年1月である。

プルデンシャル生命の調査では、会社の制度や保険業務に関連して金銭をだまし取るなどした元社員3人の事案が確認された。被害者は8人、金額は合わせて約6000万円だった。

たとえば東京都の元営業社員は、架空の金融商品への投資を持ちかけ、プルデンシャル生命の申込書類や社名入りの書面まで利用して、4人から約5300万円を受け取っていた。

熊本支社の元社員は「社員しか買えない株がある」「絶対に利益が出て元金も保証する」などと説明し、3人から約720万円を受け取っていた。

しかし問題は、それだけではなかった。

会社の保険商品とは直接関係しないものの、社員・元社員106人による投資勧誘や顧客との個人的な金銭貸借なども判明した。影響を受けた顧客は498人で、受け取られた金額は合計30.8億円だった。

内訳は、投資やもうけ話を持ちかけて受け取った金銭が25.2億円、個人的な借金などが5.6億円である。

ここで注意したいのは、30.8億円すべてが「詐欺被害」と認定されたわけではないことだ。

投資勧誘のほか、社員と顧客の個人的な貸し借りや社内規則違反なども含まれているため、「30.8億円の詐欺事件」と一括りにするのは正確ではない。

これとは別に、社員ら69人が会社で認められていない投資商品や業者を顧客240人に紹介し、顧客が業者側へ計13.1億円を支払っていたことも確認されている。

なぜ歩合制が問題になった?

プルデンシャル生命は、自社の調査でかなり踏み込んだ原因分析をしている。

会社によると、営業社員の活動を管理する仕組みが十分ではなく、営業社員と顧客との密接な関係を悪用した金銭詐取や、不適切な投資勧誘を発見しにくい状態になっていた。

さらに、営業社員の収入が不安定だったため、顧客に金を貸してほしいと頼んだケースや、営業成績を確保するために営業社員自身が顧客の保険料を一部負担したケースもあったという。

会社はそのうえで、業績に過度に連動する報酬制度について、金銭的利益を強く重視する人を引き付けたり、収入の不安定さによって不適切な行為のリスクを高めたりしていたと分析している。

問題は給料だけではない。

社内には「高い営業成績を上げる人が強く称賛される」文化もあり、成績の良い営業社員ほど「顧客からも信頼されている人」と見られ、社内で発言力が大きくなりやすかったと会社自身が認めている。

つまり、売れる人ほど評価される制度、顧客との関係を営業担当者個人に任せる仕組み、監督の弱さが重なっていた。

なぜ支社長まで固定給にするの?

今回の9月18日の方針で重要なのは、一般の営業社員だけでなく、支社長や営業所長の報酬制度まで変えることだ。

支社長や営業所長は、営業社員の採用や教育だけでなく、本来は部下の営業活動に問題がないかを管理する立場でもある。

ところが、これまで管理職の報酬も所属する営業社員の売り上げなどによって上下していた。

会社は4月の改革方針でも、支社の管理職について「営業推進面を中心に運営されていた」と認めている。

そこで今後は管理職を固定給化し、コンプライアンスや契約の継続率、営業活動の質などを評価に反映する。

簡単にいえば、「たくさん売らせた上司ほど高評価」から、「きちんと管理できた上司も高く評価する」仕組みに変えようとしているわけだ。

報酬制度を変えれば不正はなくなる?

歩合制そのものが不正を生むわけではない。

成果に応じて報酬を支払う制度は多くの業界で使われているし、プルデンシャル生命の不祥事も、報酬制度だけが原因だったわけではない。

そのため会社は、基本保証給の導入だけでなく、営業社員の行動管理、顧客への本社からの直接連絡、コンプライアンス研修、管理職の役割変更なども進めている。

それでも問題が完全に収まったとは言い切れない。

8月には、多摩支社に所属していた営業社員が「高金利の預金がある」など事実と異なる説明をして、複数の人から金銭を受け取っていた疑いが新たに判明した。

しかも、この行為は会社が新規契約の販売を自粛した2月9日以降にも行われていた可能性がある。被害件数や金額の全容は、8月24日の公表時点では分かっていない。

今回の固定給化は大きな変更だが、本当に問われるのは、給料の計算方法を変えるだけでなく、営業社員個人に頼りすぎていた仕組みや、売り上げを最優先しやすかった企業文化まで変えられるかである。

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