ニコラス・ケイジがAmazonのAI同意書を拒否 俳優の顔や声は勝手に使われる?

ニコラス・ケイジがAmazonのAI同意書を拒否 俳優の顔や声は勝手に使われる?
ニコラス・ケイジがAmazonのAI同意書を拒否 俳優の顔や声は勝手に使われる?

何が起きた?

2026年10月10日、米国の俳優ニコラス・ケイジが、Amazon制作のドラマ『Spider-Noir(スパイダー・ノワール)』に関して、AI利用を認める同意書への署名を拒否していたことを明らかにした。

ケイジはニューヨーク・コミコンのイベントで、AmazonはAIに積極的な企業だが、自分はAIに好意的な俳優ではないと説明。今後、Amazonのスタジオとは仕事をしない可能性が高いとも語った。

米メディアTheWrapが同日報じた。Amazon側からは、同意書の内容についての詳しい説明は確認されていない。

簡単にいうと

今回の問題は、映画やドラマに出演した俳優の顔・声・演技を、AIでどこまで再利用してよいのかというものである。

例えば、俳優の顔や声をデータとして保存すれば、本人が撮影現場にいなくても、AIを使って新しいセリフを話させたり、実際には演じていない場面を作ったりすることが技術的に可能になっている。

制作会社にとっては撮影費用を抑え、映像表現の幅を広げる手段になる。一方、俳優にとっては、自分が出演を承諾していない作品に、自分そっくりの姿や声が登場する危険性がある。

ただし、今回ケイジが拒否した同意書の具体的な条項は公開されていない。Amazonが顔や声の無制限な利用を求めたとまでは確認できず、実際にケイジのデータが無断利用されたという事実も確認されていない。

なぜケイジはAI利用を拒否したのか?

ケイジは以前から、AIによって俳優の演技や存在そのものが再現されることに強い警戒感を示していた。

2024年7月の米誌The New Yorkerのインタビューでは、『Spider-Noir』などの制作に向けて身体をデジタルスキャンする予定があると説明。その際、自分の身体や顔がAIに利用され、死後にも勝手に使われるのではないかと不安を語っていた。

さらに2025年2月のサターン賞授賞式では、AIが人間の演技を操作することへの懸念を表明。人間の感情や経験から生まれる表現を機械で置き換えるべきではないと訴えている。

ケイジが問題にしているのは、単にAIで映像を作ることだけではない。俳優本人が考え、感情を込めて演じたものが、AIによって本人の意思とは違う表現に変えられてしまうことである。

ただし、2024年に語っていた身体のスキャンは、一般的な映像制作でも利用される技術である。スキャンを受けたこと自体が、AIによる無断利用を意味するわけではない。

俳優の顔や声は映画会社のものになる?

結論からいえば、映画会社が撮影データを保有していても、俳優の顔や声を無条件に使えるわけではない。

米国の俳優組合SAG-AFTRAは、2023年の映画・テレビ向け労働協約で、AIによる「デジタルレプリカ」の利用に関する保護を導入した。

デジタルレプリカとは、実在する人物の顔や声などを再現するデジタルデータのことである。

組合の説明によれば、映画会社が撮影を通じて制作したデジタル複製の素材を法的に所有する場合でも、その利用には原則として俳優の同意が必要となり、多くの場合は追加報酬も求められる。

また、俳優が何に同意するのか分かるよう、利用目的について具体的な説明を行うことも求められる。

2026年に成立した新しい労働協約では、本人の身体をスキャンせずに作られるデジタル複製や、複製データの安全な管理などについても保護が強化された。

カリフォルニア州でも2024年、俳優の顔や声のデジタル複製に関する契約を規制する法律が成立している。亡くなった俳優のデジタル複製の商業利用についても、一定の例外を除いて権利者の同意を必要とする仕組みが導入された。

ただし、こうした保護には適用条件や例外があり、すべてのAI利用が禁止されているわけではない。また、今回ケイジに提示された同意書がどのような契約上の位置付けだったのかも不明である。

Amazonは映画制作にAIを使おうとしているのか?

Amazonが映画やドラマの制作にAIを積極的に導入しようとしていることは事実である。

2026年2月、ReutersはAmazon MGM StudiosがAIを活用して制作費用を抑え、映画やテレビ番組の制作を効率化する取り組みを進めていると報じた。

Amazon側は、AIは俳優や監督、脚本家を置き換えるものではなく、人間の創作活動を支援するための技術だという立場を示している。

一方、ケイジは今回のイベントで、AmazonがOpenAIに500億ドルを投資する計画にも言及し、同社のAIに対する姿勢と自分の考え方が異なることを強調した。

実際にAmazonとOpenAIは2026年2月、総額500億ドルの投資計画を発表している。ただし、これは当初の150億ドルと、一定の条件を満たした場合の追加350億ドルからなる計画であり、全額がすでに実行されたという意味ではない。

また、この投資計画とケイジに提示されたAI同意書に直接的な関係があるかどうかも確認されていない。

今回の対立は、AmazonがAIで制作の効率を高めようとする一方、ケイジが自分の演技をAIに利用されることへ強い警戒感を持っている、という立場の違いを浮き彫りにした。

これからどうなる?

ケイジはAmazonと再び仕事をしない可能性に言及したが、正式に関係を断ったと発表したわけではない。

また、『Spider-Noir』は2026年9月に1シーズンで打ち切られたと報じられているものの、今回のAI同意書への署名拒否が打ち切りの原因だったとは確認されていない。

今後の焦点は、AIを利用すること自体の是非だけでなく、俳優が自分の顔や声、演技の使われ方をどこまで決められるかという問題である。

映画会社がAIによって俳優そっくりの演技を作れるようになれば、出演の同意や報酬だけでなく、本人が望まない作品への登場をどう防ぐのかという問題も生まれる。

ケイジの署名拒否は、そのような未来に対して、俳優自身がどこまで拒否権を持つべきなのかを問いかける出来事となった。

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