「億万長者の資産に5%」カリフォルニアで投票へ ノーベル経済学者6人が支持

「億万長者の資産に5%」カリフォルニアで投票へ ノーベル経済学者6人が支持

何が起きた?

米カリフォルニア州で、億万長者の資産に一度だけ最大5%の税金をかける「Proposition 40(提案40)」が、2026年11月3日の住民投票にかけられる。

9月19日には、ダロン・アセモグル、アビジット・バナジー、ピーター・ダイアモンド、エステル・デュフロ、ポール・クルーグマン、ジョセフ・スティグリッツのノーベル経済学賞受賞者6人が、この案への支持を表明した。

対象になるのは、2026年1月1日時点でカリフォルニア州の居住者だった、課税対象資産が10億ドルを超える人などだ。

成立すれば2027年に一度限りの資産税が課され、税収の90%は医療サービスに、残りは教育や食料支援、税の徴収などに使われる。

簡単にいうと

普段の所得税は、基本的に「今年いくら稼いだか」に対してかかる。

今回の案は、それとは違う。

「いくら稼いだか」ではなく、「どれだけの資産を持っているか」に税金をかける。

たとえば、ある会社の創業者が今年ほとんど給料を受け取っていなくても、自分の会社の株を大量に持ち、それが数十億ドルの価値になっていれば巨額の資産を持っていることになる。

Prop 40は、こうした株式や企業の持ち分なども対象にして、一度だけ税金を取ろうという仕組みだ。

つまり、

「今年たくさん稼いだ人に課税する」のではなく、「すでに非常に大きな財産を持っている人に課税する」

という点が、普通の所得税との大きな違いである。

「10億ドルを超えた部分だけに5%」ではない

ここは誤解しやすい。

「資産が10億ドルを超えたら、その超えた部分だけに5%」という仕組みではない。

10億ドルから11億ドルまでは税率が段階的に上がり、11億ドル以上では基本的に5%になる。

つまり、課税対象となる資産が11億ドルなら、単純化すれば約5500万ドルという非常に大きな税額になる。

ただし、何でも資産として数えるわけではない。

企業の持ち分、株式などの金融資産、美術品、収集品、知的財産などは対象になる一方、直接保有する不動産や年金、一般的な退職口座などは原則として除外される。

そのため、新聞などで単純に「総資産の5%」と表現されることもあるが、実際には法律で定められた課税対象資産を計算する必要がある。

「株はあるけど現金がない」人はどうする?

資産税で難しいのが、この問題である。

億万長者だからといって、その財産がすべて銀行口座に入っているわけではない。

特にIT企業の創業者では、

「会社の株を5000億円分持っているが、現金を5000億円持っているわけではない」

ということが珍しくない。

こうした人に巨額の資産税を課すと、税金を払うために株を売らなければならなくなる可能性がある。

Prop 40では、この問題を考慮して、税金を5年間に分けて支払う仕組みも用意されている。ただし分割払いを選べば、支払総額は増える。

つまり、制度側も「資産価値は大きいのに、すぐ使える現金は少ない」という問題を想定している。

それでも、非上場企業の価値をどう評価するのか、巨額の税負担が企業経営や株式売却にどの程度影響するのかは、議論が続いている。

富裕層が州外へ出たら、結局損なのでは?

これが反対側の大きな主張である。

カリフォルニア州の億万長者は、現在も株式売却などで所得が発生すれば州の所得税を払っている。

資産税を嫌って富裕層が他州へ移住すれば、今回の資産税は取れても、その後の所得税収が減る可能性がある。

カリフォルニア州議会分析局は、Prop 40による一時的な税収について「数百億ドル規模」になる可能性があるとしている一方、富裕層の行動変化などによって、将来的に年間10億ドル未満の所得税収が失われる可能性もあるとしている。

支持側は、約1000億ドルを調達できるとしている。

一方で反対側には、それよりかなり少ない税収しか得られないという推計もある。

資産の多くが株式であり、その価格が動くことや、納税者自身が資産構成や居住地を変えられることから、実際にいくら集まるのかを正確に予測するのは難しい。

今回支持を表明した6人の経済学者は、巨大な富が一部の人へ集中していることなどを理由に、この税を支持している。

ただし、ノーベル経済学賞受賞者が支持したこと自体が「この税によって州経済が良くなると証明された」という意味ではない。

富裕層の移住や企業活動への影響をどこまで重く見るかについては、経済学者や政策専門家の間でも意見が分かれている。

さらに同じ選挙で「資産税を禁止する案」も投票される

話をさらに複雑にしているのが、同じ11月3日の住民投票に「Proposition 42」も出ていることである。

こちらは逆に、株式や投資資産などの個人財産を「所有していること」を理由に、新しい州税を課すことを原則として禁止する憲法改正案だ。

つまり簡単にいえば、

Prop 40は「億万長者に資産税をかける案」、Prop 42は「そうした新しい資産税を禁止する案」

となっている。

しかも両方が過半数を取った場合、Prop 42の賛成票のほうが多ければ、裁判所がProp 40を無効と判断する可能性があると州の公式資料は説明している。

そのため11月の投票では、単に「億万長者に5%課税するか」だけではなく、そもそもカリフォルニア州が金融資産の所有そのものに税金をかけられる制度を残すのかという、より大きな税制の問題も争われることになる。

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