PS5の海賊版ストア「Overdrive」が閉鎖、数時間で複製が登場 普通のPS5でも使えるの?

何が起きた?
2026年10月14日、PlayStation 5(PS5)向けの非公式ゲームストア「Overdrive」が閉鎖され、その数時間後に複製版が登場したと報じられた。
Overdriveは、通常は有料で販売されているPS4・PS5向けゲームを、無料でダウンロードできるようにした非公式ソフトウェアである。
10月9日にソフトウェア開発・公開サイトのGitHubで公開され、1,600作品以上のゲームを掲載。10月11~12日ごろにSNSで紹介されると、急速に注目を集めた。
その後、オリジナルの公開ページが削除されたものの、別の開発者たちが複製版を公開。中には掲載ゲーム数が1,800作品以上に増えたものも登場した。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から法的な警告を受けたという情報も広がっているが、ソニーと開発者の双方から公式な確認は得られていない。
簡単にいうと
Overdriveは、ソニーが運営する公式のPlayStation Storeとは別に作られた、海賊版ゲームを入手するためのストアである。
見た目は公式ストアに似ており、ゲームの画像やタイトルを一覧から選ぶことができる。しかし、正規に販売するための許可を得たサービスではない。
ただし、ここで重要なのは、普通に使っているPS5ではOverdriveをそのまま利用できないことである。
Overdriveは「Jailbreak(脱獄)」と呼ばれる改造を行い、ソニーが認めていないソフトウェアも動かせるようにしたPS5を対象としている。
つまり、一般のPS5ユーザーが突然1,600本以上のゲームを無料で遊べるようになったわけではない。
どんなゲームが無料で並んでいた?
Overdriveには、知名度の低い作品だけでなく、世界的に人気のある大作ゲームも掲載されていた。
報道で名前が挙がっているのは、次のような作品である。
- 『黒神話:悟空』:中国の神話を題材にしたアクションRPG
- 『Marvel’s Spider-Man 2』:スパイダーマンを主人公にしたPS5向けアクションゲーム
- 『サイバーパンク2077』:未来の巨大都市を舞台にしたオープンワールドRPG
ソニー自身が販売するゲームも含まれており、他社の大作から小規模なゲームまで幅広く扱っていたとされる。
しかも、Overdriveはゲームを安く販売するサービスではない。通常は購入代金が必要なゲームを無料で入手できるようにしていた点が特徴である。
ただし、掲載されているすべてのゲームが正常に動作したわけではない。ダウンロード先のリンク切れや通信速度の遅さなども報告されている。
また、非公式ストアと海賊版ストアは必ずしも同じ意味ではない。
非公式ソフトウェアには、個人が独自に開発したゲームや便利なツールも存在する。今回問題になっているのは、権利者の許可なく商用ゲームを配布する仕組みである。
普通のPS5では使えない? カスタムファームウェアとの違いは?
通常のPS5には、ソニーが許可していないソフトウェアを自由に実行できないようにする保護機能が備わっている。
Overdriveを動かすには、この制限を回避する必要がある。
今回、その背景となったのが、2026年9月29日に公開された「Relapse」と呼ばれる脱獄手法である。
Relapseは、PS5のシステムに存在する脆弱性を利用し、本来は許可されていないプログラムを動かせるようにする技術である。
報道によると、対象となるシステムソフトウェアのバージョンは7.00~13.60で、PS5 Proも含まれる。一方、バージョン14.00では、この手法が利用するセキュリティー上の弱点は修正されている。
ここで混同しやすいのが、「カスタムファームウェア(CFW)」と「Jailbreak」の違いである。
CFWとは、ゲーム機の基本的な動作を管理するシステムソフトウェアを改変・置換したものを指す。
一方、Jailbreakは、必ずしもシステム全体を別のものに置き換えるわけではない。脆弱性を利用して、本来の制限を一時的または部分的に解除する方法も含まれる。
今回のOverdriveは、後者の脱獄環境で動作するソフトウェアであり、PS5全体を独自のファームウェアに置き換えることが必須というわけではない。
ただし、対応するバージョンのPS5であっても、脱獄環境や必要な追加ソフトウェアが整っていなければ利用できない。
なぜ削除しても数時間で復活したのか?
最大の理由は、Overdriveというソフトウェアと、ゲーム本体のデータが別々に管理されていたことである。
Overdriveそのものは、ゲームを一覧表示し、外部のファイル保管サービスからダウンロードするための仕組みだった。
例えるなら、Overdriveは本が並んでいる図書館ではなく、さまざまな場所にある本の保管先を案内する目録のような存在である。
目録を削除しても、別の場所に保管された本そのものがなくなるわけではない。
今回も同様に、Overdriveの公開ページが削除されても、外部に存在するゲームファイルまで一斉に削除されたわけではなかった。
さらに、Overdriveのプログラム自体を複製することも可能だった。
報道によれば、オリジナルが消えてから数時間以内に複数の複製版が登場した。元のプログラムを解析し、再構築したと説明する開発者も現れている。
つまり、特定の公開ページを閉鎖しても、ほかの開発者が同じような機能を提供し続けることができる。
もっとも、だからといって海賊版の配布を止めることが不可能になったわけではない。ソフトウェアの公開場所だけでなく、ゲームファイルの保管先などに対しても対応する余地はある。
今回の出来事は、ソフトウェアを一つ削除するだけでは、同じ仕組みの再登場を防ぐことが難しいという問題を示している。
ソニーが閉鎖させたの? 利用すると問題になる?
Overdriveが閉鎖された理由については、まだ不明な点が残っている。
10月13日、SNS上ではソニーの弁護士がOverdriveの開発者に停止を求める通知を送ったとする情報が広がった。
その後、オリジナルのGitHub公開ページが削除されたため、法的な警告が原因だったとする報道が相次いだ。
しかし、警告書そのものや、ソニーによる公式な説明は確認されていない。現段階で「ソニーが法的措置によって閉鎖させた」と断定することはできない。
一方、脱獄や海賊版ソフトウェアの利用には、明確なリスクがある。
ソニーの「PS5用システムソフトウェア使用許諾契約」では、セキュリティー機能を回避するツールの利用や、不正なソフトウェアを動かす行為などが禁止されている。
契約違反が認められた場合、オンラインサービスへのアクセス停止や、本体の利用制限などの措置が取られる可能性がある。
さらに、商用ゲームを権利者の許可なく複製・配布する行為は、著作権侵害の問題を生じさせる。利用者によるダウンロードについても、地域の法律や具体的な条件によって違法となる場合がある。
今回のOverdriveは、普通のPS5では利用できない特殊な環境向けのサービスである。
しかし、脱獄技術によって市販のゲーム機に新しい機能を追加できるようになる一方、その技術を使って海賊版ゲームを簡単に入手できる仕組みも登場している。
ソニーにとっての問題は、一つのストアを閉鎖することだけではない。ゲームの権利を守りながら、複製や再公開を繰り返す非公式サービスにどう対処していくかが、今後の焦点となる。
情報源
- TechSpot「Sony shut down Overdrive, the fake PlayStation Store for pirated PS5 games, but clones appeared within hours」
- Tom’s Hardware「PS5 homebrew storefront with over 1,600 free PS5 and PS4 games taken down by Sony」
- IT之家「PS5 越狱商店 Overdrive 被索尼勒令关停后,克隆版本数小时内重新上线」
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント「PlayStation 5用システムソフトウェア使用許諾契約」